高い塀が、空を切り取っていた
冷たい石の地面
閉ざされた門
小さな少女は、その場に立ち尽くしている
どうしてここにいるのか
分からない
胸がざわつく
泣きそうになる
そのとき
足音がした
振り向くと、少年が立っていた
赤い瞳が、静かにこちらを見ている
乱暴な声
けれど、距離は近い
少女は何も言えない
少年は一瞬だけ迷い、そして手を差し出す
その手に、なぜか安心する
少女は、ゆっくりと手を伸ばした
触れた瞬間、風が吹く
視界が揺れる
塀の向こうの空が、やけに遠い
――次に目を開けたとき
そこにあったのは、
静かな部屋と、完璧な日常だった
あの塀も、あの少年も、
まるで夢のように、輪郭を失っていた
そして時は流れる
敵同士の名を背負い、二人は再び出会う
初めてのはずの視線が、何故か胸を揺らした












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。