前の話
一覧へ
次の話

第1話

崩壊の始まり
0
2026/01/27 13:26 更新
高谷和也
高谷和也
…うわっ
家のドアを開けると、猛吹雪だった。
雪が視界を遮る中、憂鬱な気持ちでコンクリートの道を進む。
そして強風でズレたマフラーを整え、自転車のストッパーを外した。
その時、向こうから声が聞こえてきた。
横井晃
横井晃
お、和也?
やっほ!
キラキラとした笑顔で白い息を吐きながら話しかけてきた。
こんな所で会うなんか、偶然だな……
高谷和也
高谷和也
 …おはよ
横井晃
横井晃
どうした、なんか元気ないじゃん
晃の少し長めの髪が風で靡く。
高谷和也
高谷和也
こんな天気じゃ元気なんか出るわけないだろ
少し笑いを交えながらそう言った。
横井晃
横井晃
まあまあ、向日葵と会ったらそんなの無くなるだろ
バカにしたような顔で言ってくる。
高谷和也
高谷和也
は、はあ?別に無くならねえし
少し顔が赤くなった気がしたが、気の所為な気がした。
横井晃
横井晃
ほら、寒いし早く行こうぜ
高谷和也
高谷和也
…おう。
かじかむ足をペダルに掛け、アスファルトの道を晃と並行で進む。
高谷和也
高谷和也
…ってかさ、
すこし吐き捨てるように言った。
横井晃
横井晃
ん?
目を少し開く。
高谷和也
高谷和也
なんでさっき居たの?お前、いっつもここの道じゃねえだろ
横井晃
横井晃
いや〜ちょっと今日、遠回りしたくてさ
目を伏せてそう言った。
高谷和也
高谷和也
バカだなあ……
横井晃
横井晃
別に良いだろ?
高谷和也
高谷和也
良いけどさ
晃と二人な時なんか、久しぶりだ。
お調子者で学年のリーダーの晃が、たまに羨ましく見えてくる。
横井晃
横井晃
あっ、あれ川橋?
晃が向こうにいる人を指さしてそう言った。
高谷和也
高谷和也
ほんとじゃん。ちょっと追いかけようぜ
俺達は全力でペダルを漕いだ。
少し川橋との距離は遠くて、寒さで足があまり動かない。
横井晃
横井晃
川橋ーー!!!!
晃がそう叫ぶと、川橋が振り返った。
横井晃
横井晃
おはよう!
川橋凌
川橋凌
おはよ〜
川橋が面倒くさそうな顔で手を振る。
川橋凌
川橋凌
一緒に来たの〜?
高谷和也
高谷和也
…や、偶然会った
川橋凌
川橋凌
ふーん。
横井晃
横井晃
えっ、蓮は?
晃がそう言って気づいた。
川橋はいつも蓮と一緒に学校に来ているはずだ。
高谷和也
高谷和也
…ほんとだ。どこいった?
川橋凌
川橋凌
あー、置いてきた
少し笑いながら川橋はそう言う。
横井晃
横井晃
…いやいや、ダメだろ
ちゃんと連れてこいよ!
笑い交じりに晃が言った。
川橋凌
川橋凌
えーだって、全然来なかったんだもん
川橋が少し不機嫌そうな顔をした。
その時、後ろから声が聞こえてきた。
佐藤蓮
佐藤蓮
おーい!!!
高谷和也
高谷和也
あ、来たじゃん
横井晃
横井晃
早く来いよー!!!!
蓮が立ち漕ぎをしながら東門に入る。
川橋凌
川橋凌
ねえ校内乗車!
佐藤蓮
佐藤蓮
別にいいだろ〜?
俺たちはいつもこの4人組だ。
この4人で何回遊びに行ったか数えきれない。全員親友だ。
その後、俺たちは駐輪場で輪になった。
佐藤蓮
佐藤蓮
鞄持ちジャンケンしよ〜
そう。鞄持ちジャンケンは、小学校の頃から俺たちの間で行われている。

負けた人が全員の鞄を持って教室に上がるんだ。
高谷和也
高谷和也
昨日晁だっけ?
横井晃
横井晃
うん。
俺たちのジャンケンは昨日負けた人はジャンケンには入らないというルール。
 
晁は輪から外れ、俺たちはグーの手を出した。
高谷和也
高谷和也
川橋今週ずっと当たってなくね?
川橋凌
川橋凌
まあ勝った人が絶対王政なんで〜
少しバカにしたような言い方をする川橋。
その後。
             「最初はグー、ジャンケンポン!!!!」
3人の声が響いた。
自分たちの手を見ると、負けたのは川橋だった。
川橋凌
川橋凌
はあ!?
川橋が頭を抱える。
横井晃
横井晃
お疲れ
晁が右手を少しだけ挙げて言った。
俺たちは鞄を全部放り出して、川橋がその鞄を持った。
川橋凌
川橋凌
うわ誰これ!!パンッパンじゃん!!
そういう川橋の手元を見ると、確かに鞄というよりボールになっている鞄があった。
佐藤蓮
佐藤蓮
あーごめん俺
少し吐き捨てるように言う。
高谷和也
高谷和也
蓮やばすぎやろ
俺が笑って言った。
横井晃
横井晃
嫌がらせやんもう
晁もそれに乗っかって笑い声を上げる。
高谷和也
高谷和也
早く行こうぜ
少し晁たちより先に歩いた。
川橋凌
川橋凌
も〜やだ〜
佐藤蓮
佐藤蓮
ごめんよ?
横井晃
横井晃
絶対思ってないやろ
川橋凌
川橋凌
はあ、はあ………
佐藤蓮
佐藤蓮
ほらもうすぐもうすぐ
蓮が煽るように言う。
川橋凌
川橋凌
もう腕千切れる……
息を切らしながら鞄を持つ川橋が、教室に入った。
クラスメイト
クラスメイト
あ、今日川橋?
高谷和也
高谷和也
うん
横井晃
横井晃
みんなおはにょ〜〜ん!
晁がまた変なことした。
限界まで崩した顔に、ほぼ全員のクラスメイトが笑い声を上げる。
これがいつもの晁だ。
隙があればふざけだす。
この前は先生に向かって屁をこいたぐらいだ。
クラスメイト
クラスメイト
さすが晁!
高谷和也
高谷和也
バカかよまじで……
少し時間が経ち、ホームルームになった。
長岡先生
長岡先生
えーと今日は、短縮授業……あき、ら…??
長岡先生が遂に眉間に皺を寄せ始めた。
みんなが晁の方に視線を向ける。
晁は配布されたプリントを貪り食っていた。
横井晃
横井晃
どしたんすか?
寄り目をしてこちらに向いてくる姿に、またクラス全員がどっと笑い声を上げた。
折角イケメンなのに台無しだよな……
また少し時間が経ち、次は休み時間だ。
横井晃
横井晃
あー終わらん……
晁が大量の宿題を机に置き、頭を抱える。
佐藤蓮
佐藤蓮
だから家帰ってやっとけば良いのに

笑いながら蓮は言う。
川橋凌
川橋凌
‥あー僕も漢字やってない
高谷和也
高谷和也
お前ら2人どっちも全然宿題出してないよな
川橋凌
川橋凌
いや普通に忘れちゃうんだよね〜
横井晃
横井晃
えそれな?普通に忘れてる
佐藤蓮
佐藤蓮
まあバカは治らないからな
川橋凌
川橋凌
はあ??
バカみたいな会話をして、また4人で笑い合った。
‥その時、あることに気付いた。教室に俺たち以外、誰もいない。
高谷和也
高谷和也
‥待って、なんか人少なくね?
佐藤蓮
佐藤蓮
…え、誰もおらんやん
横井晃
横井晃
俺らがキモすぎて帰った多分
晁がまた変な冗談を言う。
川橋が無言でドアに向かい、外を見た。
川橋凌
川橋凌
普通に人いるよ〜
横井晃
横井晃
ガチで俺らがキモすぎて全員逃げとるやん
俺達がまた笑い声をあげた。
高谷和也
高谷和也
マジなんなんお前
笑いながらそう言った。
佐藤蓮
佐藤蓮
キモいのは晃だけやで
横井晃
横井晃
は?は?
少し焦ったような顔をして晃が言った。
川橋凌
川橋凌
てか早く宿題やらないと〜
横井晃
横井晃
もう無理諦めた
川橋凌
川橋凌
ほんじゃ僕もやらなくていいや
佐藤蓮
佐藤蓮
マジヤバお前ら〜
蓮が少し目を伏せながら言った。
気づけば、もう授業開始まで後2分ほどになっていた。
高谷和也
高谷和也
ちょヤバい準備せな
俺がそう言うと、晃が後ろを見て言った。
横井晃
横井晃
…は?全然いないじゃん
教室を見回すと、本当に人がほぼ居なかった。
居るのは……
原田流生
原田流生
えーと、この問題は……
神崎康太
神崎康太
えーもう、全然分からんのやけど
この2人と。
川上美心
川上美心
なあ優奈ほんまにやばいんやけど〜
舞川優奈
舞川優奈
えそれな?ガチであいつさ〜
この2人と……
金沢茉莉
金沢茉莉
えねこれ可愛くない?
永井向日葵
永井向日葵
え可愛い〜
この2人。
あまりにも少なすぎる。
高谷和也
高谷和也
…ほんとだ、全然いねーじゃん
あまりにも少なすぎるので、教室がザワザワし始めた頃。
ガラガラ!!と力強くドアを開ける音が聞こえた。
神宮寺奈々
神宮寺奈々
はあ…はあ…!!
物凄い形相でこちらを見てきた。
神宮寺奈々
神宮寺奈々
…移動!!!
佐藤蓮
佐藤蓮
神宮寺奈々
神宮寺奈々
…1時間目!!移動教室!!
高谷和也
高谷和也
やばいっ!!!
俺たちは一斉にドアに向かって走った。
その時、キンコンカンコン…と1時間目開始のチャイムが鳴った。
___________その瞬間。
高谷和也
高谷和也
…は、?
足元が、ズレた。
一瞬バランスを崩してコケたかと思ったが、違った。
周りが何も見えない。ただぼやけているような、ブレているような……

物凄い耳鳴りと共に、体に浮遊感が襲う。
ロッカーの中のノートや教科書は空に浮かび、机も落ちていった。
椅子も回転しながら下へ落ちていく。
ふと自分の足元を見ると、物凄い速さで天井が迫ってきているのが見えた。
高谷和也
高谷和也
うわっ!!!うわあああああ!!!!!!
ただ叫ぶことしか出来なかった。
そしてゴッ!!と体を打ち付けた瞬間、目の前が真っ暗になった。

プリ小説オーディオドラマ