ある日の部活終わり。
些細なことだけれど、佐渡先輩の優しさにドキドキする。
先輩と2人、部室の奥に譜面台を運ぶ。
譜面台を置いて戻ろうとした時、
ひらり
一枚の紙が落ちた。
拾ってみると、
パチン
バタンッ
いきなり当たりが真っ暗になった。
突然のことに私が困惑していると、佐渡先輩が声を上げた。
だが、返事はない。
閉じ込められたってこと!?
少しの怖さと不安が体を包む。
でも、先輩は冷静だった。
暗い部屋で先輩のスマホの画面がボワっと光る。
そして数回のコール音の後、先輩は電話を始めた。
その言葉に返事をする前に、
先輩に、手を、握られていた。
暖かくて大きな手。
姿ははっきりとは見えないけれど、先輩が、私のすぐそばにいるのが分かる。
いつの間にか、怖さも不安も消えて、私の心にあるのは恥ずかしさと緊張だった。
バクバクと心臓の鳴る音が先輩に聞こえているんじゃないか、そんな気すらしていた。
そのまま、何分か経った後。
ガチャッとドアの空いた音がして、急に視界が眩しくなった。
いつの間にか、私の手と佐渡先輩の手は離れている。
峰岸先輩がニヤニヤしながらこっちを見てくるんですけど……!
もしかして手繋いでたの見られっちゃってた……!?
部室を出ると紗良が待っていてくれた。
紗良と並んで歩きながらそっと自分の右手を見つめる。
この手を佐渡先輩の手と本当に繋いでいたのだろうか。
よく考えたら、もうこの手洗いたくないよ……!
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!