第20話

20 部室
121
2024/12/19 11:00 更新
ある日の部活終わり。
浅井先輩
浅井先輩
あなたの名字さん、その譜面台2つ、部室にしまっておいてほしい!
あなた
分かりました!




佐渡先輩
佐渡先輩
俺もひとつ持つよ。
あなた
ありがとうございます!
些細なことだけれど、佐渡さわたり先輩の優しさにドキドキする。


先輩と2人、部室の奥に譜面台を運ぶ。
佐渡先輩
佐渡先輩
よいしょ。
譜面台を置いて戻ろうとした時、

ひらり

一枚の紙が落ちた。


拾ってみると、
あなた
楽譜……?
佐渡先輩
佐渡先輩
あ、それ、俺らが中2の時の文化祭で弾いた曲だ。
あなた
そうなんですね。
あなた
どんな曲ですか?
佐渡先輩
佐渡先輩
わりと有名だから聴いたことあると思う。
佐渡先輩
佐渡先輩
えっと、



パチン





バタンッ



いきなり当たりが真っ暗になった。
あなた
え?
佐渡先輩
佐渡先輩
すいません、まだ中にいまーす。
突然のことに私が困惑していると、佐渡先輩が声を上げた。

だが、返事はない。
佐渡先輩
佐渡先輩
大丈夫??
あなた
はい。
佐渡先輩
佐渡先輩
ドア、閉められちゃったな。
俺らまだいるのに。
閉じ込められたってこと!?

少しの怖さと不安が体を包む。


でも、先輩は冷静だった。
佐渡先輩
佐渡先輩
俺、峰岸みねぎしに電話するわ。
暗い部屋で先輩のスマホの画面がボワっと光る。



そして数回のコール音の後、先輩は電話を始めた。
佐渡先輩
佐渡先輩
「ごめん峰岸、部室開けてほしい。
 まだ中にいてさ。」





佐渡先輩
佐渡先輩
あなたの名字さん、峰岸が開けてくれるって。
2、3分でくると思う。
あなた
良かった。
佐渡先輩
佐渡先輩
大丈夫??
その言葉に返事をする前に、

先輩に、手を、握られていた。



暖かくて大きな手。

姿ははっきりとは見えないけれど、先輩が、私のすぐそばにいるのが分かる。


いつの間にか、怖さも不安も消えて、私の心にあるのは恥ずかしさと緊張だった。

バクバクと心臓の鳴る音が先輩に聞こえているんじゃないか、そんな気すらしていた。




そのまま、何分か経った後。


ガチャッとドアの空いた音がして、急に視界が眩しくなった。
佐渡先輩
佐渡先輩
ありがと、峰岸。
峰岸先輩
峰岸先輩
おう。
峰岸先輩
峰岸先輩
あなたの名字さんも大丈夫??
あなた
はい、ありがとうございます。
いつの間にか、私の手と佐渡先輩の手は離れている。
佐渡先輩
佐渡先輩
じゃあ、帰ろう。
あなた
先輩、ごめんなさい。
あなた
私が楽譜の話したから、部室出るのが遅くなっちゃって、それで……。
佐渡先輩
佐渡先輩
全然そんなの気にしなくて良いよ。
佐渡先輩
佐渡先輩
それに楽譜の話を広げたのは俺だし。
峰岸先輩
峰岸先輩
そーだよ。いーなー、俺も女の子と一緒に閉じ込められたかったー。
峰岸先輩がニヤニヤしながらこっちを見てくるんですけど……!

もしかして手繋いでたの見られっちゃってた……!?
佐渡先輩
佐渡先輩
早く帰るぞ。
峰岸先輩
峰岸先輩
おい、置いてくなよ!!



篠崎紗良
篠崎紗良
あなたー、大丈夫?
部室を出ると紗良さらが待っていてくれた。
あなた
うん、帰ろっ。


紗良と並んで歩きながらそっと自分の右手を見つめる。

この手を佐渡先輩の手と本当に繋いでいたのだろうか。



よく考えたら、もうこの手洗いたくないよ……!

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