真緒くんは心を開いてすべてを話してくれたのに、私は最初の頃から何一つ変わらず臆病なままだった。
純粋な真緒くんにちゃんと私の心の内を話すことで答えないといけない。
そう思っていたのに、補導されたことで私たちにはそんな時間も残っていなかった。
ここに真緒くんはいない。
私たちは個別の部屋で詳しく話を聞かれ、もうそろそろ1時間経とうとしていた。
こんなことをして何になるんだろう?
そんなこと私自身もわからない。
真緒くんのためとか、自分のためとか。
本当に私は警察官の人をおちょくってるだけなのかもしれない。
話す時間もくれなかった腹いせ?
けど、そんな時間もまたすぐに終わりを告げる。
コンッ コンッ
ノックの音でドアが開くと、座っていた警察官は外へ出ていった。
琉花ちゃんは私たちよりも先に補導されていたらしい。
黙り続ける彼女を警察官は家出少女と勘違いして保護していた。
けど、そこにいた警察官の無線で真緒くんが捕まったことを知り、全部話したという。
真緒くんが庇ったこと、家を出たあの明け方に「逃げることになった」というメールが届いたなど。
私はそれら全てを聞かされ、嘘をつくのをやめて真実を話した。
まだ生きていた真緒くんのお母さんを自分のエゴで見捨てたことも、全て。
ここまで来てやっとわかった気がする。
それから事はとんとん拍子で進んでいき、やっぱり家になんて帰れなかった。
真緒くんに会えない苦痛を抱えて1日1日を過ごし、やっと少年院へ行くことが決まる。
けど、私が来た施設には真緒くんも琉花ちゃんもいなくて、その後の話を私はなにも知らない。
今は、本当に2人の安否を心配している。
けど……。
☆
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。