-加藤part-
これもダメか...
俺はいくつか料理を作って食べてみたが、
どれも不味くてすぐに吐いてしまった。
どうやらMr.Nが言っていたことは本当らしい。
俺らは吸血鬼になってる。
人間の食事は体が受け付けない。
あの後家に帰ってからなにも食べれずにいた。
Mr.Nの声がする...
すべての始まりはこいつからだったっけ?
Mr.Nの言葉が深く胸に突き刺さる。
そう、俺達はどれだけの人を悲しませてきたんだろう。
そんな俺達についてきてくれるファンには感謝しかない。
でも...
力が入らない。
俺は床に倒れこんだ。
Mr.Nは俺の前に一人の女性をおいて消えていった。
気を失っているのか、女性は目を開けない。
既に死んでいるのか?
これを俺に食えと?
俺は女性を見つめたまましばらく動くことが出来なかった。
喉のかわきはピークに達する。
俺は女性の首に噛みついた。
体が軽くなり、満たされていく。
人の血がうまいと感じるなんて、
俺は本当に吸血鬼になったんだなぁ。
信じられない、信じたくなかった現実
もう、泣くことすら出来ず、
俺はただ女性の亡骸を前にたたずんでいた。
Mr.Nの笑い声が部屋に響く。
女性は既に灰になり始めていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。