真っ暗な夜。
月明かりに照らされて、黒い影が二つ
屋根の上を駆けている。
スタタタタタ...
はしゃぎながら先を走るのは手越。
後を増田が追いかける。
二人は足を止めて、したの路地を見下ろす。
人通りはほとんどない。
次にこの通りを通った人がターゲットになる。
二人は屋根の上に腰を下ろし、縁に座る。
静かな夜だ...
二人の囁く声だけが響く。
どれくらいたったのだろう...
スタッ...スタッ...
足音が聞こえてくる。
二人は縁から身を乗り出して、下をみる。
歩いてくるのは30代くらいの男性だった。
二人は男性に襲いかかる体勢に入る。
バサバサ!
男性の上に向かい飛び降りる。
男性は声も出せないほど驚いていた。
増田が素早く口を塞ぎ、手越は首筋に噛みつく。
首から滴る血を小瓶に注いでいく。
血を集めている増田の横で手越は泣き始めてしまう。
手を合わせ遺体に向かって頭を下げる。
増田も、血が瓶に注ぎ終わるのを確認すると、彼が灰になるまで、手を合わせて頭を下げた。
サラサラサラ...
頭の方から順に灰にかわり夜の空へと舞っていく。
増田は血の入った小瓶を片手に、立ち上がると、屋根の上に飛び乗る。
手越も後に続き、二つの影は再び月の下をかけていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。