恭平「ん?どうした?」
‘ 言わなきゃ ’ その一心で私は恭平の隣に座った。
でも、実際彼の顔を目の前にすると言葉が詰まってうまくでてこない。
本題とは違うことが声となって出てくる。
『美味しいかなって思って』
恭平「美味しいよ。久々だから余計に」
『よかった。久々だから、まずくなってたらどうしよ~って、まぁ思ってないけど、思ってた 』
恭平「どっちだよ 笑」
‘ 恭平に美味しいの食べて欲しくて、差し入れしない時も作ってたんだよ ’ なんて、勇気が出なくて言えなかった。
‘ どっちだろーね 笑 ’ と微笑むのが私の限界。
恭平「そう言えば、あなた朝先生に呼ばれてなかった? なに話したの?」
あぁ、なんでテストの日は覚えてないのにこんなことは覚えちゃってるんだろう。
そんなことを思いながら言おうと決心する。
膝の上に置いていた手にキュッと力を入れる。
『恭平。私ね.....っ、』
恭平「うん?」
『私っ...「稽古再開するよ ~!まずは高橋と道枝の曲から!」
タイミング悪く恭平に声がかかる。
言えなかった後悔と言わなくてすんだという安心が私の心を染める。
それは安心の方が大きかったと思う。
恭平「ごめんあなた。あとで聞くわ!帰り一緒に帰ろ。待ってて」
『え、あうん わかった。』
言おうと決心した私の心は帰りまでもつだろうか
素直に恭平に言える自信は全くと言っていいほどなくなっていた。
「あなた。」
『大吾くん。どうしたの?』
大吾「何悩んでんの?」
『っ、え?』
大吾「なんか、苦しそう。なんか悩んでんだろ?相談のる」
なんで気づくんだろう。大吾くんはいつもそう。
私が何かで悩んでる時はいつも気づいて話を聞いてくれる。
『...超能力者、。』
大吾「よく見てるって言って」
だから、今日は大吾くんに会いたかったんだ。
大吾「で。何があったの?」
大吾くんが隣に座り、私の言葉を待つ。
決して焦らすことはなく、私が言えるタイミングまで待っていてくれる。
そんな大吾くんの隣は驚くほど居心地が良かった。
言える気がした。大吾くんになら、言おうと思った。
『 私、いなくなるかもしれない 』
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。