京ちゃんは、私が泣き止むまで黙ってずっと頭を撫でてくれた。
子どもの頃から泣き虫だった私はいつもこうして泣いてる時は京ちゃんが頭を撫でてくれていた。
不思議とすごく安心して、落ち着く…。
そう言って京ちゃんはティッシュを取り出して私の鼻に当てた。
私は鼻をかんで、ハンカチで涙もぬぐい、大きく深呼吸した。
そして京ちゃんとバイバイして家の中に入った。
家の玄関のドアを閉めて、天井を見上げた。
不安が無くなったわけじゃない…
だっていつもどんなときも、冷静沈着な京ちゃんが部活で上手くいかなかったくらいで取り乱すなんて初めてのことだったから。
最後はいつもの京ちゃんだったけど…。
やっぱり私がもっとしっかりしないと…。
やっちまった…。
まさか自分があなたの下の名前を泣かせるなんて初めてのことだ。
クソかっこ悪い…。
俺がイラついたってなんの解決にもならねぇだろ…。
あなたの下の名前と松永が楽しそうに話してただけで、なんとも言えない嫌な気持ちになった。
何を話してたのかも知らないし…。
ただの世間話だったかもしれない。
でも………。
あなたの下の名前が俺以外の男と楽しそうに話をしているのを見るのは嫌だった。
小さい頃から俺だけに見せてくれるその笑顔を他の男に向けて欲しくない。
俺は自室のベッドに倒れ込んだ。
嫉妬か…。
そうだよな、昔から分かっていたはずなのに…
この気持ちはずっと秘密にしておきたかったのに、表に出てしまった…。
俺は、あなたの下の名前が好きなんだ。
この先もずっと守りたい存在なんだ。
だから側にいて欲しい…居てくれ…。
頼むから、離れないでくれ。
俺はそっと目を閉じた。
チュンチュン…
朝が来た…いつも通りの朝。
時刻は6:00。
私は5:00に目が覚めて、袴に着替えて自宅の弓道場に正座して的を見つめていた。
私の家はおじいちゃんちでおじいちゃんと同居している。
おじいちゃんは弓道の師範だから道場が自宅と併設されている。
私は目を閉じ、深く息を吐き精神統一をする。
今日も天気は晴れ。
心地いい風が吹いてくる。
そう言い残しておじいちゃんは道場を出ていった。
はぁ…おじいちゃんってほんとに私の事よく見てるんだよなぁ…。
私はスっと立ち上がって弓を握り、的を目掛けてひたすらに矢を放った。
京ちゃん…。
私…もっともっと強くなるからね。
京ちゃんに呆れられないように…
おんぶに抱っこばかりにならないように…
いつになるかわからないけど、いつかちゃんと京ちゃんを支えられるような存在になるからね。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!