れるside
僕は知っている
悲しみは突然やってくることを。
車が急ブレーキをふむ音、僕じゃない誰かの血、
そして君の声。
ここまでが、僕の覚えていること。
この県一番の進学校の制服を身に包んだゆうくんが座っていた。
今日の朝、この制服はこの県一番の進学校のものだとまた頭に入れた。
持っていた本を閉じ、僕に問いかける。
僕はコク、と頷く。
ベットサイドのテーブルに置いてある革の手帳をちらりと見る。
手帳には母さんの字でおきてからすぐよんでと書いてある。
最後に記憶に残っていること。
記憶が確かであれば間違いではないはず。
昨日も一昨日も謝って居たのか…
日記をとって付け足す。
僕は5歳の頃交通事故に遭った。
信号無視してきた車が突っ込んできた。
僕は“そのままだと”死んでいた。
当時、幼稚園行事の帰りで公園に行く途中だった。
当時から家族ぐるみで付き合っていた如月家と一緒に。
普段は車通りが少なく親も僕も安心していた。
いや、油断していたんだ。
公園が見えて走り出したその時…
「れるくん、危ない!」
医者をしていたゆうくんのお父さんが僕を庇った。
咄嗟の判断で突き飛ばしたのだろう。
自分の身を守ることなく亡くなった。
最期の言葉は「ゆうも、れるくんも幸せになってな」と救急車で呟いた一言だったらしい。
ここまでは教えたくないと渋るゆうくんに懇願して教えてもらったことだ。
僕は事故で頭を強打し、7年間昏睡状態だった。
そして記憶の保存ができなくなってしまった。
昨日聞いた事ややったこと、全て覚えていない。
1番最近の記憶が事故の記憶なのだから。
だから日記に全て書く。
あの日記は僕の人生だ、












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!