ぺんちゃん家での、三回目の作戦会議。
いつもとは異なって、部屋には重々しい空気が漂っていた。
まあ、原因は僕がぺんちゃんに
「もしかしたらいけるかもしれない」
という曖昧なメッセージを早朝に送ったからなんだけど…
僕は息を小さく吸って口を開いた。
ペンちゃんの耳がピクンと動く。
僕は一つ息を整えて、昨日の夢の話をした。
みどりくんが夢に出てきたこと
その夢の中でヒントをくれたこと
記憶のすべてを話した。
ぺんちゃんは目を大きくカッ開いて静止してたが、話が終わった途端に声を上げた。
ぺんちゃんは申し訳無さそうに眉をさげて、苦笑いを浮かべる。
まず一つ、僕は最初丑三つ時の夜の外にいた。
びっくりするほど周りが暗くて、周りを見渡しても何も見えなかったんだ。
上を向いても、暗かった。
そこから青鬼の館に向かったんだ。
もう館には立ち入れられないし、そもそも出現しないはずだったのに、その時は入れたんだ。
あらかじめ検索しておいたスマホ画面を見せる。
ぺんちゃんは目を大きく見開いて、感心しているようだった。
さっきの重々しい空気とはうって変わり、のどかな空気が流れ込んでいた。
本棚方面に目をやると、運営の分身達が好きに本を読み漁っている。
オレンジくんとブンキくんは海洋生物図鑑、
みどりおばけとけだまくんは妖怪図鑑を興味深そうに見つめている状況だ。
ぺんちゃんはそんな4匹の姿を優しく見つめていたが、少し眉間にシワを寄せてこちらに顔を寄せて問いかけてきた。
さっきまで自信満々に説明できていたことが嘘のような醜態。
心臓が過呼吸を起こしているような気分に襲われてくるような。
顔に出すぎていたのか、ぺんちゃんはさらに顔を近づけて言った。
ピンポイントすぎて口を閉める。
ぺんちゃんは本当に人を見るのが上手だ。
ぺんちゃんはヘラヘラしたようにこっちに語りかけてきた。
ぺんちゃんは分身達に視線を向ける。
ぺんちゃんにとって満足のいく回答だったようで、目を大きくトパーズのように輝かせている。
予想外と言えば予想外だが、さそど悪い気はしない。
逆にちょっと嬉しいまであった。
なにか気配を感じて横を向くと、みどりおばけがいつの間にか僕の腕の中に入り込んでいた。
両手でそっと抱きしめる。
すると、みどりおばけは周りに花を咲かせたように嬉しそうに顔を擦り付けてきた。
心配してくれていたのだろうか、ぺんちゃんと同様に。
本棚の方に視線を移すと、他の三匹もこちらを向いていて満足気な様子だった。
みどりおばけのほっぺたをモチモチしながら、目線をぺんちゃんに戻す。
かくして、あなたの名字あなたの下の名前は天乃絵斗の家にお泊まりすることになった……
(後お泊り回入れて2話ぐらいで館編突入すると思います)
それではスィーユー
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。