当時、俺は小学校高学年だった。
……何がきっかけだったっけ……
ああそうだ、
学校で友達が親から「ある噂」を聞いたんだって言ってたんだ。
この町に、親が赤ちゃんの頃から囁かれている噂。
この小学校の近くにある「林道高校」の裏山には、体育館よりも大きい洋館がある。
それはただの洋館ではなく、「青鬼の館」と言って、「青鬼」という化け物が潜んでいる………
その洋館に入ったら最後、大人の顔よりも大きい口で食べられてしまう。
友達はクラスの皆に得意気に話してて、皆も好奇心をくすぐられる話だったのか釘付けになってた。
俺もその一人。
それでさ、友達10人ぐらいと行くことになった。
その時の裏山はまだ綺麗だったんだけど、周りの住宅街と違う異質感がより際立ってて、奥に行くまである種の肝試しになってた。
それで森の奥に着いた時、
俺は噂通り、小学校の体育館より大きい洋館を目の当たりにしたんだ。
けど、
友達は周りを見渡すだけで、洋館を真っ直ぐ見る奴がいなかった。
それならともかく、帰り始める奴らまで出始めた。
俺がそう言ったら、皆口々に言った。
「洋館なんて見当たらないから」
一瞬のうちに頭が真っ白になった。
俺のことをビビらせようとなんてしてないって、顔で分かる。だからこそおかしいって思った。
翌日、例の噂を話していた友達を問いただしても、自分しか知らないであろう噂話を話したかっただけの一点張り。
それ以上何も知らないらしく、ただ親から聞いた話をそのまま話しただけだったみたい。
それ以降、皆一気に好奇心が冷めたみたいで、二度とその話が出てくることはなかった。
俺もそれで終わるんだと思ってたんだ。
夢にあの子が出てくるまで。
…同い年ぐらいの男の子だったかな
ちっちゃくて凄く痩せてて…
その子は
「あの子を救って」
って俺に言ったんだ。
最初はただの夢だと思ったんだけど、毎日毎日見るから気になって裏山に行ってみたら…
館の扉が開いてた。
中に入ってみたらさ、宙に浮いてる緑色の子に案内されて……
「青鬼ごっこ」に参加する羽目になって……
たっくさん仲良くなって……
それで………
………それで
そこからはあまり覚えてない
なんでバレたのか、どこで間違えたのか
ただ
怖かった
あの館から追放された日から、俺は裏山の奥に行くのを辞めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!