第21話

第十八話 自分を守った
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2024/04/14 13:25
黄土色の瞳には、いつの間にか大粒の涙が溜まっていた。

鼻声になりつつも、ぺいんとは言葉を続けていた。
ぺいんと
ぺいんと
本当は…こんな記憶すぐ忘れようって…思ってた…
ぺいんと
ぺいんと
無かったことにすれば…楽だと思ったんだ
体は震えていた。

目の前の彼は、精一杯の勇気で今この場に立っているんだ。

本当は昔の記憶が邪魔して怖いんだ。
ぺいんと
ぺいんと
でもさ…お前が裏山で倒れているところとか…そこから元気が無さそうにしてるところ見てたらさ…
ぺいんと
ぺいんと
俺とおんなじ怖い思いしたんじゃないかっ…て…
頬を伝い始める、大粒の涙。
ぺいんと
ぺいんと
ごめん…ごめん…あなたの下の名前…
優しい夕日の色をした涙が、どんどん地面へ降っていく。
ぺいんと
ぺいんと
俺があそこで逃げたから…立ち向かわなかったから…
ぺいんと
ぺいんと
あなたの下の名前…怖かったよね……























ぺいんと
ぺいんと
ごめん…なさい
(なまえ)
あなた
……。
何を…言えば

僕に何が言える

こんな……臆病者の僕に



























(なまえ)
あなた
…違う…よ
僕は彼を抱きしめた。

男子高校二年生の自分が、思考を絞り出して考えた一番の慰め方。

優しく、でも固く肩を寄せた。
ぺいんと
ぺいんと
……あなたの下の名前…
(なまえ)
あなた
ぺんちゃんが謝る必要なんてないよ、何も悪くないんだから
ぺいんと
ぺいんと
でも…さ
(なまえ)
あなた
怖くて逃げたんじゃないよ、
(なまえ)
あなた
怖いから守ったんだよ、自分のことを
(なまえ)
あなた
そうでしょ?
君は当時小学生、高校一年生だった僕のときとは雲泥の差だ。

逃げるなんて当然のこと、一人で逃げないのは物語の主人公だけ。
ぺいんと
ぺいんと
……そうかな…
(なまえ)
あなた
少なくとも僕はそう思うよ
(なまえ)
あなた
…それでも、罪悪感があるなら
抱きしめていた腕をゆるめ、彼の瞳をじっと見つめる。
(なまえ)
あなた
一緒に立ち向かおう、二人で
(なまえ)
あなた
二人ならなんとかなるよ、僕たち
ぺいんと
ぺいんと
……。
呆然とした顔で立ち尽くすぺんちゃん。

距離が近かったか、偉そうにしてしまったのだろうか…
(なまえ)
あなた
…あ……ごめんハグは嫌だった?
ぺいんと
ぺいんと
…あなたの下の名前さぁ…不思議だね
(なまえ)
あなた
え?
ぺいんと
ぺいんと
すごい、わざとらしい表現になるけど…さっきまでここにいるとさ
ぺいんと
ぺいんと
あの時の記憶が一斉にループして、脳内で流れて…立っているだけで怖くて…
ぺいんと
ぺいんと
…まるで正気なんて保ててなかったみたいに
(なまえ)
あなた
…うん
ぺいんと
ぺいんと
でもさ、
濡れていた黄土色の瞳が、夕日の光で照らされて輝く。
ぺいんと
ぺいんと
あなたの下の名前にハグされてビックリする前に、すっごい落ち着いたんだ
ぺいんと
ぺいんと
そこからあなたの下の名前の声がクリアに聞こえてきて、脳内のループも止まって…
ぺいんと
ぺいんと
正気に戻った?っていうのかな
ぺんちゃんはニコッと口角をあげる。

綺麗な黄色の花が咲いた。
ぺいんと
ぺいんと
ありがとう、あなたの下の名前
そよ風が、肌を優しく撫でる。


ここから、多分きっと、もっと怖い思いをする。

僕なら逃げてしまうんだろう。だけど、

目の前と友達と一緒なら大丈夫。



って、思ってしまった。


(なまえ)
あなた
こちらこそ、絵斗
君も大概不思議だよ




笑顔一つで今、一人の心を救ったんだから。
作者
作者
どうも、作者です。
作者
作者
大変遅くなりましたが、デイリーランキング最高152位になってますね
作者
作者
いや、そうはならんやろ
(なっとるやろがい)
作者
作者
あとしかも☆がいつの間にか100突破ですよ
作者
作者
連載最初らへんでは☆10で歓喜だったんですけど…軽めに正気保てないですよこれ
作者
作者
なんだかんだ言いまして、ありがとうございます。
作者
作者
まあここからの展開といいますか、こっからどうなっていくのかというと…
んーまあはい、
作者
作者
新章突入とでもいいますか
作者
作者
夢主くんが絵斗くんに心を救われたので、こっからすごくなります(語彙力よ)
作者
作者
なぜらっだぁが人間嫌いになったのか、そこらへんとか明かされていきます。
作者
作者
全力で頑張りますので、これからもどうぞ「孤独の館の遊戯」と天赦をよろしくお願い致します。
それでは、スィーユー

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