黄土色の瞳には、いつの間にか大粒の涙が溜まっていた。
鼻声になりつつも、ぺいんとは言葉を続けていた。
体は震えていた。
目の前の彼は、精一杯の勇気で今この場に立っているんだ。
本当は昔の記憶が邪魔して怖いんだ。
頬を伝い始める、大粒の涙。
優しい夕日の色をした涙が、どんどん地面へ降っていく。
何を…言えば
僕に何が言える
こんな……臆病者の僕に
僕は彼を抱きしめた。
男子高校二年生の自分が、思考を絞り出して考えた一番の慰め方。
優しく、でも固く肩を寄せた。
君は当時小学生、高校一年生だった僕のときとは雲泥の差だ。
逃げるなんて当然のこと、一人で逃げないのは物語の主人公だけ。
抱きしめていた腕をゆるめ、彼の瞳をじっと見つめる。
呆然とした顔で立ち尽くすぺんちゃん。
距離が近かったか、偉そうにしてしまったのだろうか…
濡れていた黄土色の瞳が、夕日の光で照らされて輝く。
ぺんちゃんはニコッと口角をあげる。
綺麗な黄色の花が咲いた。
そよ風が、肌を優しく撫でる。
ここから、多分きっと、もっと怖い思いをする。
僕なら逃げてしまうんだろう。だけど、
目の前と友達と一緒なら大丈夫。
って、思ってしまった。
君も大概不思議だよ
笑顔一つで今、一人の心を救ったんだから。
んーまあはい、
それでは、スィーユー
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!