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第1話

11話目
572
2024/06/30 13:29
人の目を見て話すのが怖くなった。

そこに映ってるのは、私じゃなくてただの"宝石"としか見られてないんじゃないかと思うと、どうしても臆病になってしまう。
zm
あなた〜?大丈夫か、ずっと下向いてるけど。体調悪い?
きっと頭を撫でてくれようとして伸ばした手なんだろう。

それが、私には怖くてたまらなかった。

パシッと音がして気づけばお兄ちゃんの手を弾いていた。
あなた
ぁ………、
zm
え、
信じれなかった、少しでも疑ってしまった。

傷ついたように歪んだお兄ちゃんの顔が見れない。
あなた
ぁ、え、ごめん、なさい…。
zm
え、ちょ、あなた!!
その場にいたくなくて、お兄ちゃんの声も無視して走り出す。
あなた
(怖いよ、…。)
どうしたらいいの。私、ここにいてもいいの?

全部、全部が怖くて仕方ない。すれ違う人の目も、手も、声も。なにかされるんじゃ、何か言われるんじゃないかと思うと怖くて堪らない。

無我夢中で廊下を駆け抜けて、中庭に出る。園庭の誰も来ない場所にそっとしゃがみ込んだ。
あなた
(最低だ、ほんと…。)
お兄ちゃんはずっと私を信じてくれた。なのに、私は………。

また涙が出てくる。
あなた
(最近、泣いてばっかだなぁ…。)
幹部、なのに示しが付かないな。カラン、と音を鳴らして床にこぼれ落ちる宝石は、まるで自分の居場所を知らせているようだった。

全部全部が嫌なる。泣いている自分も、こうなった元凶のフィオちゃんも、信じてくれないみんなも、全部全部。
あなた
(もういや……)
zm
あなたー!!!どこやっ、あ!あなた!!
すぐ後ろで声がしたと思ったらすぐ見つけられてしまった。

お兄ちゃんは私を見つけると、怒りも睨みもせず満面の笑みで私の名前を呼んでくれた。
zm
探したで、ここじゃ冷えるやろ、帰ろ。
私と目線を合わせるようにお兄ちゃんはしゃがむ。
zm
あ、また泣いてたん?ほーんま、あなたは昔っから泣き虫やなぁ…。……ごめんな、あなたが今不安定やって知ってたんにあんまなんも出来んくて。
あなた
っ、私こそ!…私こそ、お兄ちゃんが信じてくれてたのに、勝手に疑って、私、わたし……。
zm
ええねん、ええねん。いやぁ、長年反抗期のこなかったあなたもついに反抗期かぁ…!
あなた
なっ、反抗期じゃないから!!
zm
っひひ、やっぱあなたには笑顔が1番似合う。ずっとお兄ちゃんの傍で笑っててな。
あなた
……うん。
zm
なんや、また泣くんか?
あなた
泣かないから、からかわないでよ!
あぁ、やっぱり幸せだ。










フィオ
…………。
ほんとに、2人して幸せそーだな。
血の繋がってない家族?…大層なものね。

フィオ
ほーんと、ムカつく。
いいなぁ、私も欲しいなー、あんなに優しいお兄ちゃん。

記憶の中の家族は、怖くて、汚くて、恐ろしい。
全部全部が嫌いだ。

何であの子はあんなに幸せそうなの?
フィオ
同じ、宝石なのに。
許せないなぁ…。

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