フィオちゃんはどこから出したのか、ナイフを自分腕に振り下ろす。
1度は小説で呼んだことあるだろう、カッターキャー。それを知っていた自分は慌てて止めに入る。
完全につき刺さる前に止めることは出来たが、ナイフの刃は少しフィオちゃんの腕に刺さりヒビが入ってしまった。ルビーがことりと床に落ちる。
安堵したのもつかの間、フィオちゃんは私の腕を掴んで不気味に笑った。
フィオちゃんによって大きく振り上げられた私の手は、ひび割れた箇所に向かって勢いよく振り下ろされる。
理解した時にはもう遅かった。
ガシャン
モース硬度6.5にモース硬度10の腕が衝突すればその先は誰だって想像出来る。ひび割れ箇所から割れ落ちた腕は大きな音を立てて床に落ちた。
正気じゃない。
腕を割るなんて頭おかしいんじゃないの。
確かに普通の人と違って木っ端微塵にならない限り腕はくっつくけれど、腕が割れた時の痛みは想像を絶するもの。
とても正気とは思えない。
どういうこと、ときき返そうとした時。大きな音を立てて扉があいた。
音を聞いて駆けつけてきた皆が入ってくる。
思いっきり殴られてベットに倒れ込む。一瞬何が起きたか分からなくて、呆然としていた。殴られたとわかった瞬間、涙があふれる。
グルッペンとトントン以外がフィオを連れて部屋を出た。その冷たい視線が痛くて、苦しい。
ぴきっと、胸にひびが入る音がした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!