次の日も、
「ね〜、七瀬さん聞いてよ〜!」
そのまた次の日も、
「七瀬さん、次の移動教室一緒に行かない?」
更にその次の日も、次の日も、
「なーなーせーさーんー!!」
白鳥さんは、私の元を訪ねてきていた。
「ねぇ、七瀬さん!一緒にご飯食べようよ!」
今日も例外ではなく、布に包まれた弁当を片手にやってきた白鳥さんは、私と隣の席の子と軽い会話を交わした後、そう言いながらこちらにやって来る。
まだ私が承諾してないというのに、彼女は隣の席を動かし、私と机をくっ付けてきた。
私のところに来る前、さっきの子と話していたのはこのためだったのだろう。
「ねぇ、おかず交換とかしない?七瀬さんのお弁当って、いつも美味しそうで気になってたんだよね〜。
ほら、私のお気に入りのハンバーグあげるから!ね!」
私が会話をしない事に慣れてしまったのか、白鳥さんはいつものようにマシンガントークを叩きつけてくる。
私が反応をしようがしなかろうが、彼女はずっっとこんな感じだ。
手作りと思われるハンバーグを箸で摘んだ彼女は、こちらの弁当箱に向かって手を伸ばす。
それを見た私は、咄嗟に声を上げた。
「……っ白鳥さん!」
絞り出した声は思ってたより大きく、だが、昼休みの雑音で掻き消されるほど小さかった。
それでも、私と白鳥さんの間には大きく響き、彼女の動きがピタリと止まったのが見える。
「いつもいつも、なんで私のところに来るんですか!あなたの友人なんて、他にもたくさんいるでしょう!?」
彼女が来るたび、周囲の視線がこちらに突き刺さる。
「なんでこんな奴が」そんな風に言いたげな視線。
それらを思い出すと、普段は突っかかって出てこない言葉が次々と溢れてきた。
だが、白鳥さんは悲しそうな顔一つせず、いつもの笑顔を保って言い放ってくる。
「…だって、私は七瀬さんと仲良くしたいんだもん。」
春風のように温かくて優しい声に運ばれてきた言葉に、声を発しようとした私の口が固まってしまう。
ハンバーグを元の位置に戻し、正面に向かって座っていた体をこちらに向かせた白鳥さん。
大きくパッチリと開いた目に捉えられた私は、目を逸らすことすら出来なかった。
「ねぇ、ちゃんとお話ししようよ。私、もっと七瀬さんのこと知りたいな。」
両手を取られた私は、白鳥さんの手に包まれ、逃げられないようギュッと握られる。
もう諦めるしかないと悟った私は、長い溜息を吐いては自然と口角を上げた。
「……今回だけですよ。」
「やったぁ!」
子供のように喜んだ白鳥さんは、またハンバーグとこちらのおかずの交換を要求してくる。
それを丁重に断った私は、彼女が一番欲しがっていたタコさんウインナーを頬張るのだった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!