「これを飲んだら早く帰れ」
そう無愛想な声音と共に目の前にグラスが置かれる。
目の前の午後の死はシャンデリアの灯りを反射して煌めいて見えた。
「そうつれないこと言うなよ、旦那様。
折角今日は客が少ないんだ、こんな機会は中々ない。
もう少しこの空気を楽しませてもらったっていいじゃないか」
不機嫌そうに眉を顰めるディルックを尻目に笑いながらグラスを傾ける。
今日は璃月で海灯祭とやらがあるらしく、何時もは酒場で呑んだくれる輩も今日ばかりは家族や恋人とその花火を見ようと各々の大事な人のもとで過ごすのだ。
一緒にいたいと思える家族が、恋人が当たり前のようにいる。その人たちと同じ時間を過ごし笑い合う権利が当然のようにある。
なんて、なんて幸福なことだろう。
「俺には一緒に花火を見るような連れは居ないからな」
そんな言葉が無意識に口から溢れ出ていた。
ため息をついてことり、とグラスを置く。
少し量が減った魅惑の液体はなんだかいつもより魅力的に思えた。
すると何を思ったかディルックが立ち上がりガイアの手を取った。
そのまま2階まで連れていかれ、窓際の席に座らされたと思えば向かい合わせに陣取ったディルックが窓を開く。
呆気に取られたガイアが困惑を口に出すより先にディルックが口を開いた。
「その相手は僕じゃ駄目なのか」
こんなこと、適当なこと言ってあしらうのは得意分野だ。
笑いながらちょっと煽ってやって、暫くの酒の肴にすればいい。
でも、それを良しとしないガイアの本心が、ディルックの真剣な眼差しが、ガイアの口を閉ざした。
一瞬の静寂。
そして、それを上書きするように、窓の外の景色が煌めいた。
追いかけるように視線を窓の外にやると、綺麗な花火。
紛うことなき絶景、である。
しかし、その花火もガイアの視線を釘付けにはしなかった。
ガイアにとってもっと価値のある光景は、遠く離れた異国の祭りではなくすぐそこにあった。
花火を眺めるディルックの横顔。
いつも無愛想な男の端正な横顔は花火の光を受けてきらきらとかがやいている。
いつもより幾許か幼く見える彼の目尻は少し下がり、口元には笑みが浮かんでいた。
ああ、好きだなあ。
まだ同じ屋根の下で暮らしていた時の面影を見てしまって、さっきの台詞に変な期待をしてしまって、そんなことよりも目の前の美しさに目が向いて。
いつも頭の切れる、どこか本心を隠すような笑みを浮かべた騎兵隊長様の面影などどこにもなく、大切な人をいとおしいと思うガイア・ラグウィンドがそこにいた。
はい、上げどきを見失ってた海灯祭ネタです。風花祭記念にでも。
エンジェルズシェアの構造への理解が浅すぎる。はあ…。
ここから花火見えるんですかね?物理的に不可能な気しかしません。
なんか色々展開が急ですが書きたいものを詰め込みました。
公式PVにデガがいないんだからモンドで仲良く花火見てんだろうなって妄想です。好きだ。
これ、花火に見惚れるガイアさんを眺めるディルックも書きたかったけどそれすると文がお亡くなりになるのでやめました。脳内補完は完璧です。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!