第34話

ギャップも必要
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2021/12/13 07:37










私の彼氏は、世間ではツンデレだと持て囃されていて、そのせいで彼といえばツンデレというイメージが強い。

今日も夕飯の支度をして、テレビを適当につけてふと彼が出ている番組に目がとまる。

メンバーさんにも「こいつってほんとうにツンデレなんすよ〜」って弄られてて、耳を赤くして笑っている。

そんな深澤さんたちが家での翔太を見たら、どう思うんだろう。

多分腰を抜かすんじゃないかな、と自然とにやける頬を抑えながらキッチンに戻ろうとすると玄関の方で物音がしてお迎えにいく。














「翔太?おかえり」












さぁ、ここでファンの皆はきっと「ん、ただいま」なんて返してくるとでも思っただろう。それが大半だと思う。

でも家での翔太は違う。まるで180度違うのだ。
















『あなた〜〜〜!ただいまぁ!』



「はいはい、おてて洗ってね」



『はぁい』















なんということでしょう、普段のつんつん王子様はどこへやら。

私の顔を見るなりぱああっと表情を輝かせたと共にこっちに走ってきそうな勢いの翔太にお玉を突きつけ、手洗いうがいの指示をする。

多分この世であんなにも返事が可愛いアラサー男性は翔太ただ1人だけだと確信を持って言える。

あんなおめめきゅるきゅるで肌もちゅるんちゅるんなアラサー、どこ探しても居ないから。














『ただいまあなた』



「おかえり」



『まじできょーもつかれたぁ、』



「うん、お疲れ様」



『ほんとさぁ、もう今日はまじであなたに会いたすぎて撮影集中出来なかったの』



「あら、それは良くない」



『でも巻いて帰ってきたの。まじ俺えらくない?』



「ん、えらいえらい」














私を後ろからぎゅうっと抱きしめながらマシンガンのように喋り倒す翔太。

いつまでも付き合って半年ですみたいなテンションの彼に慣れすぎて多分もう離れられないと思うし、なにより当初はギャップに萌えた。

だってテレビつけたらつんっつんな別人がいるんだもん、それに理由が可愛すぎて頭を抱えたこともある。

さぁ、その理由を本人の口から聞いてみましょうか。













「ねぇしょうた?」



『なに?』



「なんでテレビではつんつんしてるの?」



『周りの変な女が寄ってきたらやじゃん、俺はあなただけに見つめられたいの』



「かわいい。すき」



『可愛くねーよ、、』













出来上がったカレーを食卓テーブルに運ぶ時もちょこちょこ後を着いてくる翔太にキスをしてあげれば、へにゃんと笑ってもういっかい!なんて調子に乗ってくるからとりあえず頭を撫でておく。

俺は犬じゃない、、と呟く翔太はまるでポメラニアンかトイ・プードルだね、なんて。

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