前の話
一覧へ
次の話

第18話

拾漆
26
2026/06/22 00:00 更新
(なまえ)
あなた
蝶屋敷で義勇さんのお風呂の支度をしたこともありますよ。お風呂を出る時に「いい湯加減だった」と言ってくれました。
冨岡義勇
そうなのか。すまない…覚えていない。
(なまえ)
あなた
いえいえ、当然ですよ!その頃は「隠」として顔もいつも覆っていましたので。
そうしてニコッと微笑むあなたに何故か懐かしさのようなものを感じた。
(なまえ)
あなた
お風呂の湯加減も良さそうなので、どうぞお入りください。手伝いが必要であればお呼びくださいね。
冨岡義勇
分かった。
そう言い残しあなたは台所を後にした。義勇は、片手で器用に着物を脱いでいく。風呂場の扉を開けるとヨモギと柚子のいい匂いがした。

この匂い…どこかで…。
数年前の夏、任務中に怪我をして蝶屋敷で世話になった時、汗と土埃で不快感が増ししのぶに風呂に入りたいと訴えたことがあった。
胡蝶しのぶ
う〜ん。冨岡さんのこの打撲と捻挫は、薬湯に入ってもらった方が、傷の治りが早いかもしれませんね。
冨岡義勇
薬湯?
胡蝶しのぶ
えぇ。効果は温泉とまではいきませんが、薬となる薬草をお湯に入れて湯船に浸かるんです。今、用意しますのでお待ちください。
そう言ってしのぶは部屋を後にする。
義勇は、この不快感のまま布団に横になる気にもなれず、椅子に腰掛けた。疲れていたのか軽い眠気が襲い始め身体が回復に入ろうとする。そのまま、少しウトウトしていると声をかけられる。
???
???
水柱様、起きて下さい。水柱様。
冨岡義勇
…ん。
???
???
薬湯の準備が整いましたのでご移動をお願いします。
冨岡義勇
…分かった。
立ちあがろうとした義勇だが、少し眠ってしまったためか傷の痛みが鮮明になり、すぐに立ち上がることができなかった。
???
???
大丈夫ですか?
「隠」の者が肩を貸そうと義勇の腕を取り自分の肩にその腕をぐるりと回した。義勇は傷の痛みもあってか風呂場までそのまま連れて行ってもらうことにした。

その「隠」から柑橘系の良い匂いがした。

風呂場に着くとやはり柑橘系の良い匂いと、それに混じって森林のようなどこか懐かしい香りがしてきた。
???
???
お風呂の湯加減も良さそうなので、どうぞお入りください。手伝いが必要であれば火の番をしておりますのでお呼びくださいね。
冨岡義勇
あぁ。
あなたは、義勇の傷が気になったが柱という立場上、見られたくないこともあるだろうと様子を見ることにした。

だが、なかなか脱衣所から風呂場に入ってくる気配がない。

椅子から立ち上がれなかったことが脳裏をよぎり、脱衣所の扉越しに声をかける。
(なまえ)
あなた
あの…水柱様。
冨岡義勇
中から返事はない。
(なまえ)
あなた
水柱様?あの、大丈夫でしょうか??あの…冨岡様?
冨岡義勇
…あぁ。暫し待て。
(なまえ)
あなた
あの、その…お一人では難しいこともあるかと思いますので、良かったらお手伝いいたします。
冨岡義勇
必要ない。
(なまえ)
あなた
ですが…。
冨岡義勇
必要ない…。
(なまえ)
あなた
そう…ですか…。
あなたは3度目は流石にないと思い引くことにした。

湯の温度が下がらないよう薪をくべていると風呂場の扉が開く音が聞こえた。
(なまえ)
あなた
(よかった。ちゃんと入ってきてくれた。)
風呂場からお湯が流れる音が聞こえ始める。暫くすると一際大きなザブッと湯に浸かる音が聞こえてきた。
(なまえ)
あなた
(大丈夫そうで良かった。)
義勇は柚子とヨモギの匂いに身体から力と疲れが抜けていくのを感じた。
冨岡義勇
(いつもより身体が軽くなっていくような気がする…)
(なまえ)
あなた
あの、湯加減は大丈夫でしょうか?
冨岡義勇
あぁ。問題ない。
(なまえ)
あなた
良かったです。
いつもより長く湯に浸かる。

義勇にとって柚子とヨモギの香りは好ましく、珍しく長風呂で30分ぐらいは浸かってしまっていた。いつもなら汗が流れてきたら湯から上がってしまうのだが、今日はじんわりと汗をかくだけで熱くなりすぎず、また冷めすぎてもいない為、長く湯に浸かっていることが出来た。

暫くするとザーッと湯から上がる音が聞こえてきた。そのタイミングであなたは火を落とす。
(なまえ)
あなた
あの、水柱様。柚子は人によっては肌が痛む場合がございますので、あがり湯をかけて頂いた方がよろしいかと思います。
冨岡義勇
…分かった。

プリ小説オーディオドラマ