そうしてニコッと微笑むあなたに何故か懐かしさのようなものを感じた。
そう言い残しあなたは台所を後にした。義勇は、片手で器用に着物を脱いでいく。風呂場の扉を開けるとヨモギと柚子のいい匂いがした。
この匂い…どこかで…。
数年前の夏、任務中に怪我をして蝶屋敷で世話になった時、汗と土埃で不快感が増ししのぶに風呂に入りたいと訴えたことがあった。
そう言ってしのぶは部屋を後にする。
義勇は、この不快感のまま布団に横になる気にもなれず、椅子に腰掛けた。疲れていたのか軽い眠気が襲い始め身体が回復に入ろうとする。そのまま、少しウトウトしていると声をかけられる。
立ちあがろうとした義勇だが、少し眠ってしまったためか傷の痛みが鮮明になり、すぐに立ち上がることができなかった。
「隠」の者が肩を貸そうと義勇の腕を取り自分の肩にその腕をぐるりと回した。義勇は傷の痛みもあってか風呂場までそのまま連れて行ってもらうことにした。
その「隠」から柑橘系の良い匂いがした。
風呂場に着くとやはり柑橘系の良い匂いと、それに混じって森林のようなどこか懐かしい香りがしてきた。
あなたは、義勇の傷が気になったが柱という立場上、見られたくないこともあるだろうと様子を見ることにした。
だが、なかなか脱衣所から風呂場に入ってくる気配がない。
椅子から立ち上がれなかったことが脳裏をよぎり、脱衣所の扉越しに声をかける。
中から返事はない。
あなたは3度目は流石にないと思い引くことにした。
湯の温度が下がらないよう薪をくべていると風呂場の扉が開く音が聞こえた。
風呂場からお湯が流れる音が聞こえ始める。暫くすると一際大きなザブッと湯に浸かる音が聞こえてきた。
義勇は柚子とヨモギの匂いに身体から力と疲れが抜けていくのを感じた。
いつもより長く湯に浸かる。
義勇にとって柚子とヨモギの香りは好ましく、珍しく長風呂で30分ぐらいは浸かってしまっていた。いつもなら汗が流れてきたら湯から上がってしまうのだが、今日はじんわりと汗をかくだけで熱くなりすぎず、また冷めすぎてもいない為、長く湯に浸かっていることが出来た。
暫くするとザーッと湯から上がる音が聞こえてきた。そのタイミングであなたは火を落とす。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!