私のポンコツ能力が引き起こした、前代未聞の大惨事。
5分間、あの完璧な主将をアホの子にしてしまったのだ。今頃、北さんは怒り狂っているに違いない。いや、怒るというよりは、淡々と「なぜあのような行動をとったのか、論理的に説明しなさい」と詰め寄られるのだろうか。それもそれで恐ろしい
背後から突然かけられた、低くて落ち着いた声。
私が漫画のように飛び上がって振り返ると、そこには部活のジャージを着た北さんが立っていた。
まだ練習中のはずなのに。
オレンジ色の夕日が、北さんの白髪交じりの綺麗な髪をキラキラと照らしている。その三白眼は、いつも通り感情の起伏を感じさせない、凪いだ湖のようだった。
私は考えるよりも先に、直角に頭を下げていた。
北さんの穏やかな声が降ってきた。
恐る恐る顔を上げると、北さんは少しだけ困ったように眉を下げていた。その耳の先端が、夕日の赤さに紛れるように、ほんのりと赤くなっている。
北さんは一つ、深く息を吐いた。
私は再び頭を下げそうになったが、北さんの「待って」という制止に阻まれた。
北さんの言葉は、いつもの「正論」だった。一分の狂いもない、理路整然とした彼の哲学。
北さんは一歩、私に近づいた。
その距離に、私の心拍数が再び跳ね上がる。ドクン、ドクンと、耳の奥で警報が鳴り響く。
北さんの視線が、私の指先へと落とされる。
ついに、核心を突かれた。
さすがは観察眼の鋭い北さんだ。ごまかせるはずがなかった。
私は小さく頷き、観念して自分の秘密を打ち明けた。
俯く私を、北さんはじっと見つめていた。
きっと呆れられただろう。そんな不気味な体質で、自分をバグらせた女なんて、警戒されて当然だ。
しかし、北さんの口から出たのは、意外な言葉だった。
北さんはふっと、柔らかく息を漏らした。
予想外の優しい言葉に、私は思わず顔を上げた。
北さんは真面目な顔に戻り、私の目をまっすぐに見つめた。
北さんは一歩、さらに私に歩み寄る。
夕暮れの渡り廊下で、二人の影が一つに重なる。
え……? 本音、って。
北さんは、耳を真っ赤にしながら、しかしその瞳でしっかりと私を捕らえて、こう言った。
その時。
バタン! と渡り廊下の扉が乱暴に開いた。
空気の読めない侑の絶叫が、ロマンチックな空気を一瞬で粉砕したのだった。
(第6話 完)











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。