夕暮れの体育館の入口で、北信介さんは至極真面目な顔をしてそう言った。
三白眼の奥にある光は、冗談を言っているようには到底見えない。
私は驚愕のあまり、声が裏返った。
能力の暴発を防ぐため、物理的に盾になってくれるという意味なのは分かっている。
分かっているけれど、推しからそんなセリフを生で聞かされたら、心臓のメーターが振り切れてしまいそうだ。
私がフリーズしていると、背後から「ヒューッ!」という下品な口笛が聞こえてきた。
案の定、宮侑がニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて茶化してきた。
治くんもおにぎりを口に放り込みながら、失礼極まりない相槌を打つ。
二人の発言に、私はヒッと息を呑んだ。
...怒られる。
あの二人は絶対に、北さんの無慈悲な『正論』の刃でズタズタにされる。
案の定、北さんはゆっくりと振り返った。その瞳には、一分の感情の揺らぎもない。
北さんの、静かな、しかし有無を言わせない声が響く。
……長っ!!
そして、なんて夢のない、血も涙もない完璧な正論なんだろう。
侑が、北さんの圧倒的な情報量と迫力に押されてコクコクと頷いた。
アランくんが背後からすかさずツッコんだ。
侑が私の肩に(能力を恐れてギリギリ触れない距離で)手をかざした。
侑はすっかり乗り気になって、楽しそうに笑っている。
こうして、私のポンコツ能力のせいで、私は明日から部活中、ずっと北さんの後ろに張り付くという、ファンから見たら暗殺されかねない『特別ポジション』を与えられてしまったのだった。
(第14話 完)












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。