切島たちがクラスの奴らに話すと言ってもうすぐ、2週間が経とうとしていた。
ほとんどのクラスメイトが病室へと足を運ぶなか、緑谷だけはこの病室に姿を現すことが無かった。
そう言い、切島は病室を出た。
切島が出る必要はなかった。
上鳴に連絡をすれば済む話だから。
でも切島は病室を出た。
爆豪が1人になりたそうだったから。
ベッドの脇に置いてある未開封のペットボトル。
それがある上で水が欲しいと言ってきたのはそういうことだろう。
切島はそれを読み取っていた。
それが爆豪にとって有難いことであるが、
後に、最悪の結果を齎すことになる。
切島はさっきの出来事を話した。
一言も変えずに、そのままの言い方で。
あの話し方は聞き覚えがあった。
少し前、その時も上鳴が飲み物を買おうとしていた。
爆豪にも欲しいものを聞き、病室を後にした。
その時だ。
あの話し方だったのは。
そしてその日、上鳴が自動販売機の前にいた時に、なんだか騒がしい声が聞こえた。
「爆豪」
珍しいであろうこの名字。
突然その名が聞こえてきた。
この騒ぎの原因が勝己、?、、、
嫌な予感が全身を駆け巡り、居ても立っても居られなかった。
病室に着いた時にはそこに勝己の姿はなかった。
病室の前を通った看護師さんが
「そこの子なら今手術室にいるよ」
「結構危ない状況らしいね」
は、?
勝己が?
なんで?? というか手術?
できるのか?
白血病の手術はできなかったのに?
咄嗟のことで意味が理解できなかった。
さっきまで元気だったのに。
あれ、?元気、だったか??
後日談だが、あの時勝己はナースコールを押せていなかったらしい。
たまたま通りかかった他の患者さんが「様子がおかしい」と医師を呼んでくれていた。
自分自身、分かっていたんだろう。
何か、いつもと違うと。
だからこそ俺を病室から出した。
勝己の性格を踏まえると、そう考えるのが妥当だ。
また、あの時と同じ轍を踏みたくない。
俺が助けるから
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!