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第3話

夢追う者は盲目である
3
2025/03/13 15:32 更新
俺はその後病院を退院した
そのすぐにミライの葬式が行われた
......
行われたはずだ
そのはずで、俺は必ず出席していたはずだ

...何も覚えていない
思い出そうとするほど
もがけばもがくほど
苦しく、沈んでいく
いつの間にか終わっていた
彼女とのお別れ
しかし、奇妙なのは
今、私の目の前には
机に置かれた数枚の原稿用紙が
置かれているだけだった
俺は自分でも驚いたが
あの経験の後、俺は物書きに
なろうと考え始めた
ミライを本の中で
生きさせてあげたいと思ったからだ
1人にさせないためだ
この本がある限り、
ミライという存在が消えないだろう
と言えるほどの本を....
もちろん、まだ
一冊も出版は出来ていない
俺はアルバイトをしながら
執筆し続けていた
小説の主人公は、『美礼』
自分の夢を追いかけて
上京してきた女性
もちろん、ミライの事だ
快活な女性として描写する
そうしていると彼女がまるで
自分の目の前で
自分の作りだした街並みの中を
闊歩するようだった
それだけで自分は
とてつもない喜びを得ていた
原稿の中の君は
服装も、姿勢も、匂いも、
呼吸も、思考も、君の全て
俺が創り出している
時には、苦しい時も
あるかもしれないが
君なら、ミライなら
どうにかしてくれる
そう思うとなんだか
自分の胸もスっと軽くなる
俺は、これから出来上がる
君の物語を日本中に
いや、全人類に
森羅万象に君を
知って欲しいと思ってる
それが俺の夢だって言っても
過言じゃない
むしろ、夢なんてものじゃなくて
それこそが使命だとも思う
筆も進み、我ながら
力作になり始めてきた
そんなある日
俺の働いていた
アルバイトの先輩に
休日の話になって
執筆活動の事を話してしまった
アルバイト
アルバイト
「....え?アキタくん、
それ、どっかに出版するん?」
秋田  ヒカル
秋田 ヒカル
「そうですね、そうしたいです」
先輩は、俺の返答を聞いて
ニヤッと笑うと
俺に言葉を吐いた
アルバイト
アルバイト
「やめときなよぉ、
あんなの、ひと握りだけなんだから
アキタくん、実家暮らしでしょ?」
アルバイト
アルバイト
「まずは、安定した
収入得るべきじゃない?」
こうなることは分かっていた
秋田  ヒカル
秋田 ヒカル
「...そうですよね...ははは
それでも、俺は
この活動が金を目的とした
我欲の限りを尽くした発想だと
思われてしまったことに
大きく苛立ちを覚えてしまう
そのせいで俺はバイトをやめた
俺は君の事を
ミライのことを一番に考えている
何があっても、
この俺の胸に刻まれた空虚が
君を思い出してくれる
俺には、この空虚が必要なんだ
空虚の大きさは君なんだ

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