【無視点】
その日は、異様な空気が家の中を支配していた。
しかし、困惑していたのはただ一人だけ。
チェコスロバキア_西側の毒に飲み込まれた愚かな共和国_
彼はまだ、真実を知らない。
今、自分が一歩一歩進んでいる廊下が、ギロチンへと続く道だとは知らずに。
何もかもソビエトの掌の上で踊らされていただけとはつゆ知らず、様変わりした空気に苦しむ姿がどれほど滑稽なことか…
ついに違和感に耐えることができなくなったチェコスロバキアが、ソビエトに問いを投げかけようとしたその時、ソビエトの口元が微かに動き、こう言い放ったのだ。
何も知らないチェコスロバキアは、呑気にきょとんとすることしかできなかった。
次の瞬間、彼はそれを後悔することになるのだけれど。
まずソビエトに胸ぐらを掴まれ、彼が信頼していた『仲間』は助けてくれるどころか彼の背中を、足を好きなように蹴り、服を踏みつけたのだ。
チェコスロバキアはなすすべもなく床に崩れ落ち、痛みに悶絶することしかできなかった。彼の唯一の希望は、想いの相手でもあり、自分の理解者であったあなた。
しかし、そんな淡い願望もいとも容易く打ち砕かれてしまうのであった。
今やかつての『同志』たちから向けられる視線は軽蔑の籠もった冷たいものだった。同志と呼び合い、一つ屋根の下過ごした記憶が嘘だったかのように。
彼の最後の問いかけに、返事は来なかった。
代わりに入れられた蹴りで、ついに限界を迎えた彼は_
意識を手放した。




















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!