気づかないうちにルーマニアの手はか細く、骨が透けて見えそうなほどに痩せきっていた。
栄養失調なんだろうか。早く決断しないとルーマニアがこのまま消えてしまうかもしれない。
おそらく健康であろう僕なら、多少なりとも血を吸われても問題ない。ならば………
…痛みを我慢してルーマニアを助けるのが最適解。
ほんのりと甘い匂いを漂わせ、僕をじりじりと壁際に追い詰めていくルーマニアは恍惚とした笑みを浮かべていた。
恐る恐る差し出した腕に尖い八重歯が突き立てられ、白い肌から真っ赤な血が滴る。
八重歯と言えど刃物ほど鋭いわけではない。かなり痛みはあるが、僕は文句を言えるような立場ではない。
溢れていく朱を一滴も零さないようにと丁寧に舐め取っていくルーマニアの姿は…はちゃめちゃで喧嘩っぽい昨日とは打って変わって儚く妖艶だった。
ルーマニアの熱が傷口から血管へと伝わってくる。
跳ねる心臓、溢れ出る血液、満足げな目下の吸血鬼。
そして気まずそうなドイツ。
この奇妙で奇妙で奇妙で気まずい時間は、僕の脳みそに嫌と言うほどしっかり鮮明に記憶されていった。
最後に残った一滴をわざとらしくぺろっと口に運ぶと、ルーマニアは満足げに微笑んだ。
不思議なことにさっきの妖艶さは何処かへ消え去り、体も健康そのもの。それどころか肌つやが増したような気すらしてくる。
『それじゃあ、また後で!』
さっきの異常な行為が嘘のように他愛もない挨拶を交わし、廊下へ出た。
…と同時に、何ともいえない悪寒が背中をぞわぞわとなぞっていった。


















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。