第6話

5.何でもない一時
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2023/01/05 15:33
はこたろーside 
しるこ
ところでさあ、あなたのニックネームちゃんて異能持ちなんかな?
はこたろー
…聞いてないから知らないけど
説教を早々に終わらせてコーヒーを淹れに来た僕に付いてきた兄さんが尋ねてくる。

この人に長々と怒るだけ無駄なので早く切り上げたのに、付いてくるなよ。
異能持ちは、この世界に存在する特殊な能力を持つ人間。BinTRoLLのメンバーや花江さん、リモーネ先生、正一さんだって異能持ちだ。

だから、あなたの下の名前ちゃんが異能持ちである可能性は充分にある。
はこたろー
本人に聞くの?
しるこ
聞けたらねぇ。嫌なコト思い出しちゃ可哀想だし
はこたろー
…珍しくマトモだね
しるこ
Σ(゚ω゚)
ハコタロサン!?
その変な顔をやめて頂きたい。

僕は何も可笑しいことは言ってない。
しるこ
はこちゃん冷たい…
はこたろー
いつものこと。あと、その呼び方やめて
しるこ
ハイ…
あ、そう言えば。あなたのニックネームちゃんの日用品とか、買いにいかなきゃだよね。明日行く?
はこたろー
僕もそう思ってたから、兄さんの部屋に行ったの
そしたら火の玉出して遊んでんだから、まったく…
しるこ
作業が…進まなくて…。すみませんでした
はこたろー
……もうやめてよ
しるこ
うん
頷いた兄を前に、溜め息を一つ吐く。

僕も甘いな。

自分で言うのも何だけれど、生真面目な性格上、世話をする側に回ることの多い僕は甘えられたり頼られたりするとそれを中々断れない。

現にしょんぼりと項垂れて謝ってくる兄を許してしまう自分に呆れている。

そのくせ僕自身は人に甘えることも頼ることも苦手なのだから実に気分が悪い。
あなた
あ、あの…はこ兄、しる兄…ただ、いま
リビングの扉からじらいちゃんといちはちさんと散歩に行っていたはずのあなたの下の名前ちゃんだった。

続いて二人もリビングに入ってくる。
じらいちゃん
ただいまー!
a1857
ただいまぁ
はこたろー
あなたの下の名前ちゃん、じらいちゃん、いちはちさん、おかえりなさい。コーヒー飲みますか?
じらいちゃん
飲む!
a1857
俺はほうじ茶にするよ。あなたのニックネームちゃん、ほうじ茶飲む?
あなた
ほうじちゃ?
a1857
うん、そういう名前のお茶
あなた
のんでみたい…
はこたろー
今お湯沸かしますね
じらいちゃん
はこたろさん、手伝うよ
はこたろー
ありがとう
僕とじらいちゃんがコーヒーとほうじ茶を用意している間、散歩がどうだったか話すあなたの下の名前ちゃんの話を兄さんといちはちさんが聞いていた。

この人はこの人で、面倒見がいいところもあるのだ。

“仕方なく”兄さんの分のコーヒーも用意する。
はこたろー
どうぞ
a1857
ありがとぉ、はこたろさん、じらいさん
あなた
あり、がとう
しるこ
ん?俺の分もあるの?
はこたろー
要らないなら貰うよ
しるこ
い、いる!ありがとうございます!
はこたろー
どういたしまして
また甘やかしてしまったが、まあいいか、と思い至る。

気分は悪いが結局のところ、僕はこういう何でもない一時がとても好きなのだ。

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