『納豆ごはんと梅干し』
「ふふ、シンプルだね。でも栄養素を考えると足りないから、だしまき卵と豚汁も追加しようか」
『でも、それは買いに行かないと』
「私の冷蔵庫に昨日買ったばかりの食材が置いてあるから、さっとできるよ。
勿論、硝子の分も作り置きしていこう」
『うん』
“私も、手伝っていい?”と許可を待つあなたちゃん
すでに袖を捲し上げて、私に加勢する気満々な様子。
その姿に、思わず微笑みがこぼれた。
──なんていじらしく思ってしまうのだろう
愛しい、という言葉では足りない。
胸の奥が、じんわりと温まるような感覚。
彼女の存在が、この場の空気の温度を変えてしまうようだ。
「それじゃあ計量カップの洗浄と卵割りを任せるよ」
『任せて』
子猫柄のエプロンを首に引っ掛けて、パタパタと自分の冷蔵庫を開けに行く彼女
その後ろ姿が、どうしようもなく慈しみたくなった。
_____
食卓に並んだ湯気の立つ料理。
彼女が箸を動かしながら、ふと呟いた。
『前から思ってたけど、傑くんのご飯ってすごく美味しいね』
その言葉に、胸がじんとくる。
料理の腕を褒められることはあっても、
彼女のように、心からそう言ってくれる人は少ない。
「……また今度、ともに作ろうか」
別に期待なんてしていない。今回は偶々寂しいときに私と出会ったまでなのだから。
だけど____
『作りたい。優しい味がするから、私は好き』
ほのかに微笑みながらそう言った彼女。
その表情は、柔らかくて、あたたかくて──
彼女自身は気づいていないのだろう。
それがどれほど、私の心を揺らしたか。
「……すまない、ちょっと席を外すよ」
立ち上がって、部屋の外へ。
私は壁にもたれて、深く息を吐いた。
熱くなった顔に手を当てて、冷静になろうとする。
「……あの顔、反則すぎないか」
──どうして、こんなにも惹かれてしまうのだろう。
彼女の笑顔が、私の理性を簡単に崩してしまう。
むしろ私の方が、意識しすぎてしまっている。
ああ、駄目だ。
それでも、今はまだ
この距離を、大切にしたい。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。