ピッ、カシャン、ゴロン
無機質な機械音だけが響く空間。
少々あついアルミ缶を手に、入口が見えるベンチに腰掛ける。
冷えた手先と頬に缶を当てて、温もりを感じつつ、私はこの体温に近い温度に安心を覚えて目を閉じた
もし、もう少し待ってたら、誰かが任務から帰ってここを通り過ぎないかなって。
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夏油傑 side
「おや、」
肩に付いている雪を払いながらマフラーを畳んで寮へ戻ろうとした。
玄関からの曲がり角で目に入ってきたのは、まだ開けていないココアを持ってベンチで寝そべるあなたちゃんだった。
いくら暖房が効いているとは言えど、さすがに枕無しだと寝違えてしまう姿勢
そのせいか、寝顔が穏やかでなく眉間にシワを寄せうなされているようにも見える
ここは起こすべきか。
「あなたちゃん」
隣に座って声を掛ければ、彼女の指がピクリと跳ねた。
「起きようか」
『…ぅ、ん』
まるで私に返事するように小さく唸ると思えば、そのまま身を翻してベンチから落ちそうになり、
『わ…っ、あぶな』
手助けして支える隙もなく、彼女は背筋を伸ばしてシャキリと座り直した。
『あれ、傑くん?』
そして私の顔を見たのか暗かった瞳に輝きを灯した
まるで迷子の子供が大人を見つけたような安堵を感じたように。
「どうしてこんな所で寝ていた?」
あなたちゃんが目をぱちくりとさせた後、ゴニョゴニョと小さく呟く
『その…誰か帰ってこないか、見張っていたらつい眠たくなって…』
「それはつまり、私じゃなくても、帰ってくるのは誰でもよかったってことかな」
『それは…、』
最初に彼女は否定しようとしたが、そうするのを諦め、小さく頷いてくれた
正直な所も含めて、あなたちゃんのいいところだよ。
『勿論、傑くんにも会いたくて』
「!」
そうだね、君はここの皆を大切に想っているのが分かるから。
でも、会いたいと伝えれくれるだけでも私には充分だ。
『だからその、』
『晩御飯でも一緒に食べれたらなって。
硝子ちゃん寝ているから邪魔したくなくて。でも私、一人で食べるのも淋しい、から…』
誘ってくれるのはいつものことだったが、今回彼女は緊張しているように感じた。
「やけに心情を表せるようになったじゃないか。私もお腹を空かせているから丁度いいね。何が食べたい?」
彼女の症状が完治する日がそう遠くないと、確信できたことを幸運に思った。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。