その魔王さんが、何故俺を?
どうするものか…どうしようもないというか…
このまま此処で必要最低限の生活を送って死ぬ。それ以外何があると言うのか。
魔王と一緒に?
何をされるんだろう。母さんから聞いた話だと大分冷酷無慈悲な奴だ。助けてくれたのも気まぐれと言っても納得できる。
人形になるんだろうか…
まぁ…別に良いか…
目の前にあるのはボロ家だった。
家を全体的に見終わった後、この家が昔に戻る想像をする。
不思議だった。家が。散乱した木材が。段々元あったであろう位置に戻っていく。
まるで、巻き戻しをしている様だった。
あっという間に木造の大きな家になった。
大分難しい事を言われている。
こんな事、したこと無い。集中力も、足りる筈が無かった
気が散って行く。
息が出来ない…
両肩に手を置かれる。
不思議とその声を聞くと、眉間に寄ってたシワも無くなって、集中出来ていた。
そのまま数分経つ。
さっきより遥かに魔力を使ってないのに何一つ変わってない家の様子に驚いた。
出来るかな…という懸念が出てくる。
……?
懸念?
これは…感情…?
魔王さんに着いて行ってから二月程経った。
魔王さんは毎日毎食ご飯を作ってくれている。偶に手伝う事もあった。
そして魔王さんは偶に家を開ける事があった。
何をしているかは知らない。俺はもしかしたらその理由を知りたいかも知れないが取り敢えず置いておく。
ここに来てから、人として扱われる様になった。村の人達よりもずっと優しい。
想像していた生活とは丸っきり違って戸惑う。
相変わらず声は柔らかく顔は固くで返事をして来た。
俺はずっと帰りを待っていた。
そんな考えが頭によぎる。
この二ヶ月、俺は何だかんだ言って必死だったのかも知れない。
捨てられない様に、頑張ってたのかも知れない。
捨てられたかも知れない。と思ったら、途端に胸に嫌な感情が広がった。
怖いと、寂しい…だろうか
何だかんだ言って信用してたのかも知れない。
でも、俺が上手く魔力操作出来なくて家が元に戻ってしまう事が何回かあった。その度に失望されてたのだろうか。
完全に、頭を持ち上げられなくなってしまった。
諦めた。
ガチャ
扉が開いた音がして反射的に顔を上げると、そこには自分より年上の。でも少年の顔があった。
言葉が出ず、口をパクパクさせている俺に戸惑う魔王さん。明らかに心配を感じさせる声をしていた。
ご飯……?
優しくて力強い言葉に俺は泣く事しか出来無かった。
久し振りに、MENと言われた。
俺を救ったのは神様なんかじゃなくて、優しい魔王だった。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!