抱っこしていたスライムさんは一度地面に下ろしてあげた。
ぽよん、と不安げに揺れる(ように見えた)ボディに、また抱きしめてあげたくなる衝動をぐっと堪える。
……今はそれどころじゃない。
竜に教えてもらった通り、意識を集中させる。
魔力の流れを感じ取るように。
頭の奥で、誰かに呼びかけるように。
スライムさんは私の目の前で、ぷるぷると揺れていた。
こちらを見上げている……気がする。
すると__
頭の中に、小さな声が響いた。
驚いて目を開く。
今の声は__
スライムさん?
スライムさんの体が、嬉しそうに大きく揺れた。
さらに、スライムさんは周りも見えるようになったみたいだった。
雄叫びをあげる竜――
じゃなく、ヴェルドラさん。
その声量に、洞窟の壁がびりびり震えた。
ミシミシ……。
……大丈夫かな、この洞窟。
崩れたりしないよね?
でも当の本人は気にした様子もなく、堂々と胸を張っていた。
ヴェルドラさんは案外おしゃべりというか、尊大な態度だけれど丁寧にこの世界のことを教えてくれた。
そのおかげで、私はようやく一つの事実を理解する。
__ここは、私が知っていた世界じゃない。
完全に別の世界。
つまり……異世界。
そして、一つ驚いたことがある。
スライムさんは、なんと私と同じ転生者だった。
通り魔に刺されてスライムに転生したと言う。
……。
死因が理不尽……。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!