第98話

Flower93【岩本③】
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2021/04/16 06:56
岩本照
岩本照
この前のことなんだけど・・・ごめん(>人<;)
(なまえ)
あなた
えっ?
岩本照
岩本照
俺や舘さんの言葉に耐えがたくなって飛び出していったんだと思ったから。
(なまえ)
あなた
あっ・・・
彼女の表情が変わった気がしたけど、俺はさらに続けた。
岩本照
岩本照
でも、あれが俺たちの本心だから。
それだけは分かってて欲しくて。
(なまえ)
あなた
岩本さん・・・
岩本照
岩本照
お節介なことをやってる自覚もあるんだ。
だけど、どうしてもやらずにはいられなくて・・・。
君のことが・・・心配だから。
(なまえ)
あなた
心配・・・ですか?
岩本照
岩本照
うん。
(なまえ)
あなた
どうしてそこまで・・・
恐る恐る訪ねる彼女に俺は真剣に答える。
岩本照
岩本照
俺は、初めて君を見かけた日からずっと君を探してた。
そして、こうして再会して。
君からあの日「死のうと思ってた」って聞いて、再会した意味があった気がしたんだ。
(なまえ)
あなた
再会した意味?
岩本照
岩本照
ああ。君が大切にしてきた恩師が、俺を君に引き合わせてくれたんじゃないかって。
俺がその恩師に変わることはこれから先もありえないけど・・・それでも、君を支えてあげることは出来るから。

泣きたい時も、寂しい時も・・・君が望めばいつでも会いにいくし、傍にいてあげることだって出来る。
(なまえ)
あなた
そんなことあるわけ・・・
岩本照
岩本照
俺は・・・君を支えるために、再会したと思ってるよ
いつも凛とした様子で俺の前にいた彼女の表情が、今日はいつもと違っている。
それは何かに耐えるように平静を装っていても、隠しきれなくなっているのが、俺にも理解できた。
岩本照
岩本照
あなたの名字さん?
俺の視線から逃げるように、彼女は下を向く。
そして、絞り出すように言葉を紡いだ。
(なまえ)
あなた
岩本さん、大げさですよσ(^_^;)
私なら大丈夫です。
今までもそうやってやってきたんですから。
肩が震えるのを目にして、俺は即座に席を立った。
そして、彼女の隣に膝をつくと、ゆっくりと顔を覗き込む。
すると、彼女は瞳いっぱいに涙を浮かべていて・・・。
それを見た俺は涙をそっと指で拭き取った。
岩本照
岩本照
大げさなんかじゃないよ。
大丈夫じゃないじゃん。
(なまえ)
あなた
うっうう・・・
子供に言い聞かせるように、頭に手を置き、優しく告げる。
岩本照
岩本照
ごめん。やっぱりもっと早く君に伝えていればよかった。
そしたら、こんな風に泣かせないで済んだのに・・・。
尚も身体を震わせ続ける彼女を前に、俺は両手を広げて名前を呼んだ。
岩本照
岩本照
あなたの下の名前ちゃん、おいで。
ハッとして顔を上げた彼女の腕を引き、胸元に収め、そっと髪を撫でた。
岩本照
岩本照
今までよく・・・頑張ったね。
彼女が必死に抱えてきたものが何かははっきり分からないけど、それでも、その状況が限界を迎えていたのは紛れもない事実だったんだろう。


それはとめどなく流れる涙が物語っていた。
それから、彼女は緊張の糸が切れたかのように、俺の胸でひとしきりに泣いた。
何の言葉を発する訳ではなく、ただただ泣いていた。
彼女が落ち着いた頃には、お店に入ってだいぶ経ってからだった。
ゆっくりと俺から離れ、持っていたハンカチで涙を拭う。
岩本照
岩本照
大丈夫?
再び問いかけた俺に、彼女は深々と頭を下げた。
(なまえ)
あなた
すみません、取り乱しちゃって。
岩本照
岩本照
いいんだよ(^-^)
少しはスッキリできた?
(なまえ)
あなた
はい(*˘︶˘*)
顔を上げた彼女の目は、明らかに分かるほどに腫れ上がっていた。
岩本照
岩本照
ちょっと待って。
俺は彼女を部屋に残し部屋を出ると、偶然通りかかった店員さんに声をかけて、おしぼりを貰った。
それを手に再び部屋に戻ると彼女の前に座り、前髪をかきあげて、おしぼりを瞼(まぶた)へと当てる。
(なまえ)
あなた
岩本さん?
岩本照
岩本照
しばらくこうしてた方がいいかな、って。
泣きすぎたせいか、両目、結構腫れてる。
(なまえ)
あなた
はぁ・・・お気遣い、すみません…φ(。。*)
目が見えない分、瞳から伺える感情がなくて、彼女の気持ちまでは察することは出来ないけど。
ただ話口調がいつもよりだいぶ落ち着きを取り戻してる気がする。
落ち着いているとはいえ、仕事の時の事務的なものとも違って、やわらかい印象だった。
(なまえ)
あなた
あの・・・岩本さん?
岩本照
岩本照
なに?
(なまえ)
あなた
岩本さんってこういう時の対応って慣れてるんですね・・・
岩本照
岩本照
えっ?
(なまえ)
あなた
いや、動きがスマート・・・というか
岩本照
岩本照
あっ、ああ。
俺、妹と弟がいるからかな。
昔から、世話・・・焼きがちみたいで。
たまに注意されるんだよ(^-^;💦
(なまえ)
あなた
そうなんですか・・・。

あっ、もう大丈夫です。
そう言うと当てていたおしぼりをとり、ようやく俺と視線を合わした。
岩本照
岩本照
大丈夫、そうだね。
さっきほどじゃない。

じゃあ、いい加減、なんか食べよっか。

飲み物以外まだ頼んでないもんね、俺ら(^-^)
(なまえ)
あなた
はい(^^)
2人とも笑顔を取り戻してから、食事をとって、たわいも無い話をして。
時計はもうすぐ21時になろうとしている。
岩本照
岩本照
そろそろ出ようか。
明日に響くと大変だし。
(なまえ)
あなた
そうですね。
車に乗り込んで、彼女に住所を尋ねると、予想通りきょとんとした表情を見せた。
岩本照
岩本照
家まで送るよ。
なんかあったら大変だし。
(なまえ)
あなた
でも・・・
岩本照
岩本照
心配しなくても、何にもしないから。
君を家の前に下ろしたら、すぐ帰るよ(^^)
(なまえ)
あなた
あの、別にそんなつもりじゃ・・・(;^_^A
岩本照
岩本照
さぁ、行こう
走り出す車の中で、俺たちはなんの言葉も発することなく、その空間に身を委ねていた。
お互いに距離が近く感じ始めた俺たちにとって、その空間はやけに居心地が良かったから。


数十分走って、彼女の家の前に車を停めると、彼女は頭を下げてこう言った。
(なまえ)
あなた
今日は、その・・・色々とありがとうございました。
岩本照
岩本照
どういたしまして(^-^)
(なまえ)
あなた
らしくないところを見せちゃって、ごめんなさい(。>_<。)
岩本照
岩本照
いや、俺は嬉しかったよ。
きちんと君と向き合えた気がして。
(なまえ)
あなた
岩本さん・・・
岩本照
岩本照
これからは、遠慮しないで、なんかあったら・・・いや、無くてもいいけど(^-^;💦
気軽に連絡してきてよ。
(なまえ)
あなた
でも・・・
岩本照
岩本照
もう、遠慮はなし。
これからは気軽に話せる関係になろう。
堅苦しい言葉とか、いらないからさ。

改めて、よろしく。
あなたの下の名前ちゃん( ・ㅂ・)و ̑̑
差し出した手をゆっくりと握り返し、彼女は答えた。
(なまえ)
あなた
えっと・・・遠慮抜きにできるように、最善は尽くします(;^_^A

よろしくお願いします、岩本さん(^^)
精一杯の彼女の返答を経て、俺たちの関係はまた一つ変化したのだった。

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