数年前
中国の元繁華街。
かつては賑やかだったそこに響く、骨を外す音に吐き気を感じた。
口元に付いた血を拭ったキャニバルが、こちらを向いた。
イラッとした。
人間を、食べ物扱いだなんて。
ドドドッ
空から降ってきた赤い氷柱をなんとか避けきる。
ニルが笑いながら、俺を攻撃しようとする。
ドスッ
さっきのナイフはわざとやった。
ナイフがニルの肩に刺さるように、向きと高さを調節しながらルーカスにナイフを弾かせたんだ。
ルーカスはニルの傷を見た後、くるっとこちらを向いた。
空気が、一気にルーカスに引き寄せられるような感覚がした。
ルーカスは俺から全く目を逸らさない。
ルーカスは陽緋が人の肉を捌くのに使っていた刀を掴む。
ちょっとでも笑わないと、緊張と恐ろしさでおかしくなりそうだった。
俺は腰に差してあるもう一つのナイフを取った。
かなり戦ってお互い疲れてきた。
陽緋は残した人骨をプラプラ揺らす。
ドサッ
下の方で音がした。
それと同時に、右に体重をかけられなくなって、体勢を崩す。
見ると、膝より下の右足がなかった。
ボンッ
目の前で何かが爆発した瞬間、俺は仲間に助けられた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!