前の話
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18:00
窓から外が見える席で
弟のちゃなと珈琲を飲んでいた
店内には今日という日にぴったりの
軽快なリズムで華やかなバラードが流れている
周りを見れば楽しそうな恋人達ばかり
特別な日に愛しい人の隣で共に笑えるのは
どれだけ幸せなことなのか
世の中の人々は分かっているのだろうか
今高校3年のちゃなは毎日勉強に追われる日々で
俺と同じ大学へ新入しようと頑張っている
だから今日だけでも、外へ連れてあげたかった
たまには息抜きしないとだし
でも、正直この店にはもういられなくなってきたな
恋人達が増えてきて甘いムードが漂う店内で
ただの兄弟が2人でいるとか虚しくなるから
2人で珍しく恋愛話をしていた時
店内に入ってきたカップルが席を探している
周りを見渡すと、席は満席だった
なら丁度いいか
もうこの空気感から抜けよう
急に俺がそう言ったから疑問に思ったのだろう
でも周りを見渡してみて、
あのカップルに気づいたように
ちゃなは笑って了承してくれた
さすが俺の弟だ
変なところで抜けてる弟に
自分が着けてたマフラーを巻いてやった
試験はもうあと1ヶ月もない
尚更風邪なんか引いちゃ大変だ
ちゃなが指さした方へ歩いていくと
だんだんカラフルな光が点々と見えてくる
それと同時に沢山の人々が笑っていた
今日一番の笑顔ではしゃぎながら
写真を撮るちゃなを追いかける
楽しそうだな ㅎ
やっぱり連れて来てよかった
星が散らばった夜空をバックに
キラキラと輝く綺麗すぎるツリーが
俺の想いを無視して、彼奴の顔を思い出させる
あぁ… 最悪だ
必死に思い出さないようにしてたのに
端の方で立ってちゃなを待っていたら
美男美女のお似合いカップルが
写真を撮ってほしいとお願いしてきた
彼氏の方のカメラを受け取って
後ろのツリーも写るように3枚ほど撮る
レンズ越しの写真でも分かるぐらい
幸せそうな表情で笑う2人は
本当に綺麗だと思った
この2人にはゴールインしてほしいな
なんて、初対面の人に何を思ってんだか
やっぱり、かっこいい人の隣には
その人に見合うほどの人がいるんだな
なら、俺はかないっこないか
彼奴の隣に俺は似合わない
この目の前のツリーよりも眩しい笑顔を
持っている彼奴は
俺の 太陽 だった
あんなに好きだと思える人がいたんだ
と最初は驚いたけど
今となっては
もうこの恋が最後なんじゃないか
この人以上に好きになれる人は
これから現れないんじゃないか
そう思うようになってしまった
惚れすぎたな、ほんと
今日という特別な日に
彼奴の隣にいたかった
彼奴の隣でいつもの様に笑いたかった
でも、誘えるわけない
彼奴には好きな人がいることを知ってるし
それが俺ではないことは分かってるから
だから今日だけは、その好きな人と
幸せな時間を過ごしてほしい
あ、でも彼奴のことだから
誘えてないかもな ㅎ
意外と奥手だし ㅎ
何だか周りの人からチラチラ見られてる気がする
ぇ、俺なんかついてる?
変な格好してるか?
そう、顔を触った時
あ、… なるほど
目と頬が冷たい水で濡れていた
意思とは反対に
自覚したらどんどん溢れてくる涙に
自分で困惑していた
でも、今まで耐えてきたこの気持ちが
涙と共に切れて一気に溢れ出てくる
会いたい
あの人に会いたい
好き って言いたい
なんで俺じゃないの?
俺はずっとずっと見つめてきたのに
あの人のことしか見えないのに
こんなに好きになって
苦しくなるなら
出会わなければよかった
なんで俺と同じ大学を受験したの?
なんでいつも俺に構ってくるの?
好きな人がいるなら期待させないでよ
これ以上、俺の心を奪わないでよ
彼奴の思わせぶりな態度は
毎回俺の期待を破っては心に傷を作る
本当に最低だと思うけど
そんな彼に今だって
「 もしかしたら来てくれるんじゃないか 」
って心が勝手に期待して自惚れてしまう
彼奴はどんな人にも優しいから
実際勘違いしてしまう人だって多い
どこまでも罪な男だよ
でもね、
どれだけ彼のことを嫌いになりたくても
なれないんだ
何をしてても頭の中には彼奴がいて
俺の心は彼奴を必要としてる
好きなんだ
この想いはきっとこの先変わることは無い
いつまでも俺の人生において
" 一番愛してた人 " として
心の中に残っていくのだろう
、、切ないな
ちゃなにマフラーを貸してしまい
俺はダウンしか防寒のものを着ていない
流石にずっと立ってると
冷気が押し寄せてきて寒くなってくる
あ〜… ちゃな早く帰ってこないかな
ホットココアが飲みたい
突然頬に温かい何かがピトッと当てられ
驚き後ろを振り向くと
ホットココアを手に持って
俺の反応に笑ってる大好きな人がいた
いや、、なんでいるんだよ!?
タイミング良すぎるだろ!
そう頭の中でつっこむけど、
心は嘘をつけなくて
胸がどんどん脈打っていく
こいつが俺が恋しく思っていた
くぉんすにょん だ
そう尋ねると少しの沈黙が流れる
俺の目を見るその眼差しは
なんだかいつもと違う気がした
真剣というか… 本気というか
俺は耐えられなくて咄嗟に目を逸らす
手の中で広がる温かいホットココア
覚えててくれたんだな
それだけでこんなに嬉しくなる
そんなことを考えていたら
すにょんがやっと口を開いた
好きな人…か
ってことは、
すにょんの好きな人がここにいるんだ
少しでも、もしかしたら…
って勝手に期待してた自分を恨みたい
最悪だ
会いたくなかった
すにょんの好きな人がここにいるなんて
どんな偶然だよ
もしかして神様が
俺に現実を突きつけようとしてるのか?
やめてくれ
せっかく会えたのに…
こんな特別な日に
あぁ、俺何言ってんだよ
すにょん下向いちゃった
絶対傷つけた…
すにょんが俺に振り向いてくれないから
って、酷いこと言って
すにょんを傷つけて
こんな俺は最低だ
振り向いてくれる訳が無いだろ
でも俺の口は吐き出したら止まらなくて
視界がだんだんぼやけていく
その瞬間、身体が温もりに包まれた
嘘だ、、
本当に?本当に今好きって…
聖なる夜に
俺の恋が叶いました
まだ実感湧いてなくて
夢のようだけど…
好きな人の隣にいられるのは
こんなに楽しくて幸せが溢れる
今まで一途に想い続けてきてよかった
来年も、その先もずっと
すにょんの隣にいられますように
おまけ
end .
皆さん!✧*。🎄𝐌𝐞𝐫𝐫𝐲𝐂𝐡𝐫𝐢𝐬𝐭𝐦𝐚𝐬🎄✧*。
良い一日になりますように🍀*゜