「 メェ〜 」とヤギが鳴いた
お腹が空いてるのだろうか
口元に野菜を持ってきてあげると、
むしゃむしゃと頬張り始める
可愛らしいなと、私は声が漏れた
そうして癒やされていると、後ろから声がかかる
まだ話したことのなかった声
私はすぐさま振り向いた
ふさふさ髪の、困り眉の男の子
頬がまあるく赤い、ふわりとした男の子
どちらも一年生の忍び装束だ
私の名前、知っていたのか
伏木蔵くんとはよく会っていたし
そういえばこの前、図書室で二ノ坪くんに会って
下坂部くんとも、時々会っていたし
忍たまというのは仲がいいから、沢山話をするだろうし
そう考えると、学園内、
学年内で情報が広まるのも納得がいく
い組はまだ、任暁くんと会ったことがあるくらいだから
イメージとかは…ないけど
ろ組とは、ちょっと雰囲気が違うし
は組の教室にお邪魔したときはいなかったし
消去法だな
少し緊張している彼ら
でも、怖がっている感じはない
不思議な気分になりつつも、嬉しい気分が勝った
だが、それよりも…何故
何故急に、彼らは私に話しかけようと思ったのだろう
前々から話したいとは言ってくれたが
…それでも、別の意図があるような
私はせめて怖がらせぬようにと、返事する
まだオドオドとした動きだった
だが、一度呼吸を整え、私に言う
落ち着いた声で、私を引っ張った
初島くんも、
そんな上ノ島くんを手伝うよう私の背を押した
小屋から数歩
すぐ近くの場所まで手を引かれて
私は石が積み上がった、
墓のようなものがある場所に案内された
小さく、沢山の名前が書かれていた
墓"のような"ではない
これは墓だ
彼らは静かに話した
詳しいことは口にしないけど
どんな生き物たちだったのか
思い出話をしてくれた
一体、どれ程の数がここにいるのだろう
私は胸がズキリと痛んだ
話したら、案内したら
私が壊したり、踏みにじったり
そんなことをするって…考えてもいいのに
『 だから、案内したんです 』
告白してくれる初島くんと上ノ島くん
なんだか、信用されているんだな
…嬉しいな
私は墓の前に立ち、手を合わせた
視えないけれど
素敵な幽霊なんて、視えないけど
目の前にいる子たちに深く、頭を下げていた













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!