第332話

331︰生き物たち ✎
2,771
2026/01/20 14:00 更新




















「 メェ〜 」とヤギが鳴いた



お腹が空いてるのだろうか


口元に野菜を持ってきてあげると、

むしゃむしゃと頬張り始める



あなた
ふふ…



可愛らしいなと、私は声が漏れた



そうして癒やされていると、後ろから声がかかる



__
その子、人懐っこいですよね



まだ話したことのなかった声



私はすぐさま振り向いた


ふさふさ髪の、困り眉の男の子

頬がまあるく赤い、ふわりとした男の子


どちらも一年生の忍び装束だ



あなた
えっと、君たちは

上ノ島一平
上ノ島一平です

初島孫次郎
初島孫次郎です〜

あなた
上ノ島くんと、初島くん
あなた
初めまして、私は…

初島孫次郎
琴理あなたさん…ですよね
初島孫次郎
平太とか怪士丸…伏木蔵に話を聞いてて…
初島孫次郎
ちょっと前から…会ってみたくて

上ノ島一平
あなたさんって、呼んでもいいですかっ?

あなた
ん…ああ、いいよ




私の名前、知っていたのか



伏木蔵くんとはよく会っていたし


そういえばこの前、図書室で二ノ坪くんに会って


下坂部くんとも、時々会っていたし



忍たまというのは仲がいいから、沢山話をするだろうし


そう考えると、学園内、

学年内で情報が広まるのも納得がいく



あなた
つまり、初島くんは一年ろ組ということか
あなた
上ノ島くんは…い組かな

上ノ島一平
っあ、はい…!

あなた
ふふ…そうなんだ



い組はまだ、任暁くんと会ったことがあるくらいだから

イメージとかは…ないけど



ろ組とは、ちょっと雰囲気が違うし


は組の教室にお邪魔したときはいなかったし


消去法だな


あなた
……



少し緊張している彼ら



でも、怖がっている感じはない


不思議な気分になりつつも、嬉しい気分が勝った



だが、それよりも…何故



何故急に、彼らは私に話しかけようと思ったのだろう


前々から話したいとは言ってくれたが



…それでも、別の意図があるような



上ノ島一平
…あの、あなたさん

あなた
なんだい?上ノ島くん



私はせめて怖がらせぬようにと、返事する



まだオドオドとした動きだった


だが、一度呼吸を整え、私に言う



上ノ島一平
ちょっとだけ、ついてください




落ち着いた声で、私を引っ張った



初島くんも、

そんな上ノ島くんを手伝うよう私の背を押した




小屋から数歩



すぐ近くの場所まで手を引かれて


私は石が積み上がった、

墓のようなものがある場所に案内された



あなた
…これは




小さく、沢山の名前が書かれていた



墓"のような"ではない



これは墓だ

















初島孫次郎
竹谷先輩と、伊賀崎先輩、綾部先輩が作ったんです
初島孫次郎
天女様に殺された、生き物たちの為に



彼らは静かに話した



詳しいことは口にしないけど



どんな生き物たちだったのか

思い出話をしてくれた




一体、どれ程の数がここにいるのだろう


私は胸がズキリと痛んだ








あなた
…どうして、私に話したの?



話したら、案内したら


私が壊したり、踏みにじったり



そんなことをするって…考えてもいいのに


上ノ島一平
…竹谷先輩と伊賀崎先輩が、貴方のことを話していました
上ノ島一平
『 生き物が好きな人 』って
上ノ島一平
『 いい人 』だって

初島孫次郎
さっきも言いましたけど
初島孫次郎
伏木蔵たちからもいっぱいあなたさんの話聞いていたんです

上ノ島一平
安藤先生も…皆
上ノ島一平
貴方と会った皆…そう言うから
上ノ島一平
わ、悪い人じゃ…ないのかなって


初島孫次郎
それにっ…さっきの子
初島孫次郎
人懐っこいけど、天女様には懐かなくて
初島孫次郎
…貴方には、懐いていたから

あなた
……



『 だから、案内したんです 』



告白してくれる初島くんと上ノ島くん




なんだか、信用されているんだな


…嬉しいな









私は墓の前に立ち、手を合わせた



視えないけれど

素敵な幽霊なんて、視えないけど


目の前にいる子たちに深く、頭を下げていた


















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