前の話
一覧へ
次の話

第341話

340:森の中にて
1,209
2026/05/15 14:00 更新










手合わせの後、
少しだけ諸泉くんと話をしていた

すると、少し遠くの草むらから音が

パッと視線を移すと、
高坂殿と池田くんの姿が

あなた
おや


諸泉くんが驚いたように
高坂殿の名前を叫んでいたから

多分、諸泉くんは呼んでいないのだろう


だが、それはそれとして
何故池田くんがここにいるのだろうか

先程から気配は感じていたが...


立花くんたちに任せていた筈だけど、
冒険心で飛び出してきたのだろうか

意欲があるのはいいことだ

私が彼の成長を止める理由はない





諸泉尊奈門
こ、高坂さんっ…どうしてここに

高坂陣内左衛門
鍛錬が早くに終わったので、少し様子を見に行こうと思ってな


高坂殿の「 修行は順調か 」という問に
諸泉くんはすぐさま、「 はい 」と返答する


勢いで言ってしまったのだろうか

諸泉くんは声を漏らしてから、こちらを見やるので
私は笑みを向ける

すると諸泉くんは、肩を撫で下ろしたように息をした


諸泉くん、前よりは酷くないみたいだが

まだ自信がないところはあるのだろう


それも致し方なし


私は池田くんに声をかける

あなた
ねぇ、池田くん

池田三郎次
えっ…ぁ…はいっ


突然話しかけられたからか

池田くんは慌てて返事をした


驚かせてしまったことには罪悪感を感じながらも
私は池田くんの前にしゃがみ込む

あなた
諸泉くん、すごかったでしょ

池田三郎次
へ?

あなた
君、さっきの手合わせ見ててくれたよね
あなた
諸泉くん、池田くんの目にはどんな風に見えた?


会話のタネを作ろうと、私は諸泉くんの話を持ちかけた


本人の前で聞くことではないかもしれないけれど

実際、諸泉くんは驚いて緊張している


問うた池田くんは、少し困った素振りを見せた

池田三郎次
あのっ…僕
池田三郎次
最後しか、見てなくて…

あなた
おや、そうだったのか

池田三郎次
で、でもっ
池田三郎次
僕が久作たちと野原に行って、戻ってくるまで
池田三郎次
その時間、続けられたっていうのは...
池田三郎次
凄い...と、思います

あなた



あなた
ふふっ…そっか


「 ありがとう 」
そう言って、私は池田くんに微笑む

そして、そのまま諸泉くんに顔を向けた

諸泉尊奈門
…あなた、なんだその顔は

あなた
なにって…笑顔だよ

諸泉尊奈門
いや、それは笑顔じゃないだろ
諸泉尊奈門
にやにやしてるぞ

あなた


驚いた私は、思わず頬をつかんだ

確かに口角は上がっている気がするけど…

高坂陣内左衛門
確かに、にやにやしているな
高坂陣内左衛門
池田くんも、そう思うだろう?

池田三郎次
えっ!?は、はいっ…!

あなた
…そんなにだろうか?


三人そろって言うまでって…どれだけだ

困惑していると、
段々と頬が痛くなってくる

どうやら、本当ににやけてしまっていたらしい

高坂陣内左衛門
ほら尊奈門、大人しく自分の実力を認めろ
高坂陣内左衛門
でなければあなたの頬が限界を迎える

諸泉尊奈門
えぇ…!?


「 高坂さんがそんなこと言うなんて... 」

褒められたのか、
怒られたのかのかわかりづらいけど

多分褒め…に入るのだろうな

だって、諸泉くんの呟きを耳にした高坂殿が
諸泉くんの頭掴んで沈めている

照れ隠しというやつだ

諸泉尊奈門
ちょ…高坂さん痛いっ…


高坂殿は諸泉くんの反抗をものともせず、
諸泉くんの頭をわしゃわしゃする

可愛がって…いるのだろうか?

あなた
ふふ…


先輩後輩の戯れというのは、見てて微笑ましいものだな

私は思わず笑みがこぼれた














池田三郎次
……


二人を見て笑う私を、じっと見つめる池田くん

私は高坂殿たちを見つめながらも
そんな彼に、意識を向けていた









プリ小説オーディオドラマ