復旧作業が本格的に始まり、
ヒーロー科A組もそれを手伝うことになって
もう何日目か。
復旧作業に関わると、
必然的に街の人とも関わることになる。
恐怖を持つ街の人と関わるのは難しくて
怖がられたり、疎まれたりすることも多い。
ただそれをできるだけ減らそうと
敬語と愛想笑いというものを
覚えようと頑張っている。
だからA組との会話で敬語を使ってみたり
しているがこれが中々に気恥しいし難しい。
なんて、普通の会話を
最近毎日のように踏陰としている。
抱きついてしまったのだから
踏陰にバレているんじゃないかと思うも
踏陰は何も言ってこないから
そのまま黙ったままにしている。
距離が遠のくでもなく、
急接近するのでもなく、
多分、緩やかに近くなっている気がする。
踏陰がどう思っているかは知らないが
何となく嫌われてないことは分かる。
むしろ、特別に思ってくれてるような気も、
...しなくはなかったりもするのだ。
もどかしくて、でも居心地が良い。
多分ずっとこのままなんだろうなと思う。
どちらも言い出す気は、今のところは無いし。
そうやってゆるゆるとこの恋心が
育つままに幾らかの時が過ぎていく。
入学から三度目の春。
卒業式を間近にするわしらは
毎日のように寮の共有スペースに自然に集まり
どうでもいい話をダラダラとしている。
卒業すれば皆ヒーロー活動に忙しくなるし、
緑谷は先生になると言っていた。
わしもやることはあるしなぁと
思いつつ一応楽しみにはしてみる。
これが叶うほど暇になる頃には
何歳になっているのだろう。
ひとりで楽しくてクスクスと笑っていると
顔がうるさいと言われてしまう。
「しょうがないじゃろう」と答え、隣を振り向く。
耳を塞ぎながら首を横に振る。
あっという間に3年が過ぎてしまう。
あっという間に
この時間が懐かしいものになってしまう。
やだなぁ、寂しいなぁ、なんて思うけど
皆それを思っていない風に笑うから
一緒に笑ってしまう。
もう一週間後には
皆かっこいいヒーローを職業的にすることになる。
もちろん、この人達を職業ヒーローなんて
肩書きで書き留めることはできないが。
ケラケラと笑いながら
響香の方に倒れ込むと三奈も倒れ込んでくる。
ドミノ倒しみたいになって、
響香がわしを支え、わしが三奈を支える。
学生生活が終わる。
もうすぐ花束と卒業証書を受け取る。
この生活には戻れない。
桜が散って、夏には青々しく緑に涼しさを覚え、
暖かくオレンジ色に紅葉して、葉が散って、
また桜が咲き ────
どれだけの季節が巡っても、
またこう出来ればいい。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。