荒廃した大地。
森があったはずなのに木々は燃え尽くされている。
この景色を黒霧の向こうと比べても
結局どちらも地獄であることに変わりはなかった。
この戦いで死傷者が
出ないことなど有り得なかった。
そこらに転がる、サッドマンズパレードを
受けたヒーローたちの呻き声は耳に響く。
過去に殺めてきた命が
腕に、足に、しがみついている。
身体が重くなって倒れかかって、
嫌いだ、と呟いた。
誰でもいい。
AFOの悪の息の根を止めてくれたら。
そうすれば、この世の残酷な部分は
少しでも減るだろうか。
そんなことは無いと頭では確信しつつも
全ての責任を押し付けようとした弱さに
また絶望して止めていた息を吐いた。
次に息を深く吸う。
託された望みを繋ぐために。
誰かの未来を紡ぐために。
逸らしていた眼を向けて
負傷者の数の多さを視た。
救護班の位置を特定し、
まずはそちらに駆け寄る。
そうするとまず、訝しげな顔をされ
迷った末にその協力の申し出を信じてくれた。
できることを示せば
まずは位置特定が優先だと言われ
傍にいる動けるヒーローたちと
救護隊員たちにどこの方角に
真っ先に優先すべき重傷者がいるかを伝える。
たまにその中に、
視知ったヒーローの核や、顔があった。
それ故焦っていた。
今まで一度もA組の顔を視ていない。
もう先に搬送されているならまだしも
そうでないならば核が消えている。
そんな考えはしたくないと頭を横に振る。
気が狂いそうだった。
ずっと叫んでいないと気が狂っていた。
誰かに何かを伝える役割で良かった。
この大きな声に、
願いさえ載せられる。
いることに気づいて。
そして早く、あなたの名前を呼んで走ってきて。
踏陰、響香、お茶子、梅雨 ───
あの日、病院で会った日以降
会えていないA組のクラスメイト一人一人に
思いを馳せ、どうしようもなく願う。
生きていてくれ、と。
探し、探し、叫び、探し。
そうしてやっと視慣れた核を捉えた。
息を飲んだ。
思わず開いた口を塞いだ。
一層声を張り上げた。
すぐにでも走りたかった。
この役目がなければとうにもう走り出していた。
必死に足を抑え、感情を抑え、役割を優先する。
声は震えていた。
良かったと、涙が零れて拳で拭って。
─── どうにも今すぐ走って抱き締めたい。
そんな思いをギリギリまで堪えて。
堪えていたのに。
やっと、やっと、こちらに運ばれてきた頃に、
顔を視てしまってもう
どうにも耐えきれなくなってダッと駆け出した。
ホークスと救助隊に支えられて
歩く踏陰を思わず抱き締めて、
ぎゅうぎゅうとその腕に力を込める。
状況が視えなかったからこそ
募っていた心配から今になって解放された。
首に腕を回し、顔を埋め、
頬にその艶やかな黒が触れるまで強く抱き締めた。
心臓の音がする。
穏やかで優しい声が耳に届く。
そうしていると次第に縋るような
声も最後に名前を呼ぶ頃には
それをその赤い瞳を
視つめながら言えるくらいには落ち着いていた。
ふと微笑む踏陰に、
わしがやられるわけないのだと
いたずらっぽく返すと心も落ち着き、
おずおずと抱き締めている腕を解いた。
腕にタグを回し指さして、
次にホークスにもそれを回す。
どうせわかっているくせに
素直に受け取らないのはどうかと思う。
顰め面をすると笑われた。
良かったとまた涙が零れそうになって堪える。
全く、今日は泣きすぎだ。
でもそれくらい心配し、
大切に思えていたのだと思うと
それでもいいように感じてしまう。
よしっと頬を叩き役割にもどる。
どうか早く平和にできますようにと
願いを込めて今度は叫ぶ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。