ぼんやりと霧掛かりの頭は晴れ、思いのままにあの絵の中での出来事を話した。一種の物語を見ているような、きらきら輝く目つきでこちらを見つめて耳を傾けられている。まるで映画やドラマのような話だというのに、否定する事なく真意に、そして楽観的に聞いてくれているのが、こちらとしてはかなり嬉しかったし、御伽話を語っているみたいで話すのが楽しかった。
微笑みを浮かべる皆んなを見ると、何だか自分もほっとする。
それから有頂天になって絵の中での出来事を語った。自分だけど自分じゃない、今どうしてるかわからない。そもそも存在してるかどうかすらも怪しい…みたいな、不思議な存在の人達の話が殆どだからか、皆んな驚いたり笑ったり不思議そうにしたりで終始表情が忙しそうだ。
今思い出せた話を出し切り、話疲れた頃。
えとさんが顔を上げ、壁掛け時計を確認すると、玄関の方に顔を向けて呟いた。
奥の方から数人の声の共に足音が聞こえる。
自分の狐耳がじゃっぴ達だと確証し、皆んなの反応を待ち遠しくしながら椅子に背を預けた。
まだ俺が絵から出れたことって、じゃっぴ達には言ってないはず。今の俺なんか見たらどんな反応するだろうなぁ…
足音は近づき、見慣れた緑パーカーが見えた。
長時間話してたのだろう。顔に疲れが見えていた…が、俺と目を合わせた瞬間、落ちかけていた瞼は見開き、こちらを凝視してきた。すると頬はどんどん赤くなり、感嘆の声がこちらの耳にすんなりと聞こえてくる。通路の真ん中で固まって突っ立てるリーダーを横目に疑問に思うのあさんやら諸々も、リーダーが、
「どぬちゃん…」なんて言い残してこちらを指差す。すると、ほぼ同時に、のあさん達もそれぞれらしいリアクションを取り始めた。固まる者も叫ぶ者も居たし、喜ぶ者も勿論居た。
皆んなが俺を囲って、戻って来れた事に喜んでくれた。頭撫でられたり、肩つついてきたり、「今日は記念日だね」みたいな…いつも通りの皆んなのテンションにほっとした自分が居た。
ちゃんと戻って来られて良かったぁ…
シヴァさんの動かすワゴンには十数個ののビーフカレー。コクのある匂いがリビング全体に広がり、食欲がそそられる。あれをなおきりさんとシヴァさんが…
なおきりさん、ちょっと料理できるは不安だったけど…シヴァさんが頑張ってくれたのか、あるいはなおきりさんが大人しく手伝ってくれたのか…まぁ、二人とも頑張ってたんだろうねぇ…
スプーンに手を伸ばし、あつあつに煮込まれた牛肉を早速口に放り込む。シチューのちょっぴりした甘酸っぱさと、柔らかすぎず硬すぎずの丁度いい歯応えの牛肉。
なおきりさんも、意外と料理出来るのかなぁ…?この一口だけでも、お腹は満足だと言わんばかりだった。
今度はご飯にスプーンを入れると、真正面に居るヒロくんが口の中で頬張るシチューを飲み込んだ後、あっと声を発した。
…「数時間後に消える」そう言ってたのかな。
多分、あの絵から抜け出してからうん時間と寝てたんだろうなぁ…その間に消えちゃったのかも。…もう少し早く起きてれば、まだ残ってたのかなぁ…
展覧会で見つけたあの紙で何となく状況を察することは出来たが…心配そうに呟いてからゆっくりとスプーンを進めるもふくんを見て、少々身が怯んだ。
…皆んな優しいなぁ…
俺もなんか感謝しなきゃだね…!
美味しそうな食べかけのビーフシチュー。皆んなの方を見て一旦手を止めて、俺は皆んなにこう伝えた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。