第15話

その15
1,011
2018/04/09 07:32
「あれ?あなたじゃんか」


「あ、隣人」




あたしがどうしようもなく玄関の前で途方にくれていたら、



タイミングよく隣の部屋からあたしの隣人こと




今一番関わりたくない男No.1が出てきたのである。




ああ、また貴方ですかい。







「あのさ、その隣人てやめてくんない」




いい加減ケンティーって呼んでよ。



なんて頬ぶうっとしながら言ってくる隣人にあたしは口元だけ笑って





「なんですか隣人さん」




と言い返してやったのである。



もちろん目は笑っていませんよ、ええ。





「うん、もういいや」




そんなあたしを見て隣人は何か諦めたようにそう小さく呟くと




力なく玄関の前に座りこむあたしを見て




隣人もそれを真似る様にあたしの前にしゃがみこんだ。





うん、顔近い。顔が近いです隣人さん。





「あれ、あなた今日すっぴん?」




彼はあたしの顔をじっと見つめては



自身の首を傾げながらそう聞いてくるではないか。




いくら関わりたくない男No.1とは言え、



こんな整った顔した人に毛穴が見えるんじゃないかってくらいの至近距離で見つめられると



正直かなり恥ずかしいわけで。





「それがなにか」




内心どきどきしながらも至って普通のトーンで返すあたしは流石である。




あああ、そんなにじろじろ見つめないでほしい。




「やっぱ、女の子のすっぴんてこうぐっと来るもんがあるよな」



「は、はあ」




いやいや。そんなにんまり笑顔で言われましても。



女子からすればそんな親しくもない人に



こんな至近距離ですっぴん見られるなんて



あまり嬉しいことではないのです。



やっぱりこの人は改めて変な人だと実感した。

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