あれから数分経つと 、
遠慮がちにドアがノックされた 。
どうやら彼は私が服を整えたかが心配らしい 。
そう言えば 、 熱を測る為だっけと私は思い出した
私は素直に謝り 、 体温計を脇に挟むと
ほどなくして電子音が流れた 。
体温計を持ち上げてみると 、
そこには38度3分と表示されてある 。
まぁ 、 病院に行く程では無いが
それなりに高い数字だった 。
私は服を整えても未だに入ってこようとしない彼に
問題無い 、 と声をかけると
土鍋を乗せたお盆を携えてゆっくりと入ってくる 。
私が淡々と答えると 、
私に聞こえるぐらいの溜め息を零した彼が
少し呆れた顔で口を開く 。
ちくりと小言をもらったものの
心配からだと分かるので 、 何だかくすぐったい 。
彼は 、 全くと言いながらお盆ごと
サイドテーブルに乗せ 、 土鍋の蓋を開ける 。
中には梅が入ったお粥 。
梅はよく風邪に効くと聞くからだろうか 。
彼は手際良くお粥を取り分けてくれ 、
丁寧に梅の種は取り除いてたようで
簡単にほぐすだけでお粥と混ざっていくのが見える
受け取ったものの 、
スプーンを握ったままじっとお粥を見る私に
彼は疑いの目を当ててくる 。
私の心を見透かしたように釘を指してくる彼に
私は軽く呻きながらお粥を口に運ぶ 。
舌に広がるお粥の味は
お米の味を生かして塩は少な目だったが 、
ふぐされた梅のまろやかな酸味と塩味が
味を締めて、丁度良いバランスになっている 。
澄ました顔の彼だったが 、
微かな笑みが浮かんでいる 。
それは 、 学校で見かける外行きの笑顔とは違った
優しい微笑みで、つい凝視してしまう 。
一瞬浮かんだ微笑みは即座に消えてしまったのは
何だか勿体無い 。
私は 、 そう思ったが口にはせず
誤魔化すようにお粥をちびちびと口に運ぶ 。
私が 、 おかゆを食べ終わった後
少ししてから 、 彼は帰る準備をした 。
彼が指を指した先には 、
未開封のスポーツドリンクや汗を拭くためのタオル 、
予備の冷感シートがサイドテーブルに置かれてあった 。
彼はそのまま帰宅しようとドアノブを握ると 、
私は何故か昨日の事が脳裏を過ぎってしまい
少し居た堪れなくなってしまった 。
私が 、 雨の中公園にいた理由 、 と付け加えると
彼は唖然としたように目を見開く 。
あんなにモテるのに勿体無い …… と 、 私が思うと
彼が少し疲れたような表情を浮かべる 。
私は不服そうな彼を見て 、 くすっと笑いながら
彼が部屋を出るのを見届けた 。
ただ 、 やはり風邪は風邪なようで
治ってきたと思っても 、 激しい睡魔に襲われ
彼がいなくなってから 、
すぐにベッドへ横たわった 。
『 翌日からはまた 、 顔見知りの他人 』
なんて彼を思いながら 、 私は眠りについた 。
N E X T .












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!