第5話

『 4 . 』
1,515
2024/08/08 11:23 更新








赤雅
 持ってきたけど 。 








 あれから数分経つと 、


遠慮がちにドアがノックされた 。




どうやら彼は私が服を整えたかが心配らしい 。


そう言えば 、 熱を測る為だっけと私は思い出した








あなた
 …… まだ測ってないです 、 




赤雅
 俺がいない間に
測っとけって言ったろ ……




あなた
 すみません 、 
ぼーっとしてました 。








 私は素直に謝り 、 体温計を脇に挟むと


ほどなくして電子音が流れた 。




体温計を持ち上げてみると 、


そこには38度3分と表示されてある 。




まぁ 、 病院に行く程では無いが


それなりに高い数字だった 。








あなた
 入っていいですよ 。 








 私は服を整えても未だに入ってこようとしない彼に


問題無い 、 と声をかけると




土鍋を乗せたお盆を携えてゆっくりと入ってくる 。








赤雅
 何度だった ? 




あなた
 38度と少しです 。
多分薬を飲んで寝たら治ります 。








 私が淡々と答えると 、


私に聞こえるぐらいの溜め息を零した彼が


少し呆れた顔で口を開く 。








赤雅
 市販の薬は
あくまでも対症療法だろ 。


赤雅
 ウイルスは全然倒してくれねぇよ 


赤雅
 ちゃんと寝て 、
免疫機能に仕事してもらえ 。








 ちくりと小言をもらったものの


心配からだと分かるので 、 何だかくすぐったい 。




彼は 、 全くと言いながらお盆ごと


サイドテーブルに乗せ 、 土鍋の蓋を開ける 。




中には梅が入ったお粥 。


梅はよく風邪に効くと聞くからだろうか 。




彼は手際良くお粥を取り分けてくれ 、





丁寧に梅の種は取り除いてたようで


簡単にほぐすだけでお粥と混ざっていくのが見える








赤雅
 ん 、 熱くねぇから 。 




あなた
 あ 、 ありがとうございます 








 受け取ったものの 、


スプーンを握ったままじっとお粥を見る私に




彼は疑いの目を当ててくる 。








赤雅
 …… 何 、
俺に食べさせて欲しいの ?


赤雅
 悪ぃけどそんなサービスは 
受け付けてねぇんだわ 。




あなた
 誰も言ってませんよ 。 


あなた
 …… ただ 、 
料理もできるんだな 、 と




赤雅
 一人暮らししてんだから 
んな事 、 当たり前だろ




あなた
 ごもっともです 、 








 私の心を見透かしたように釘を指してくる彼に


私は軽く呻きながらお粥を口に運ぶ 。




舌に広がるお粥の味は


お米の味を生かして塩は少な目だったが 、




ふぐされた梅のまろやかな酸味と塩味が


味を締めて、丁度良いバランスになっている 。








あなた
 ん 、 美味しいです 、 ! 




赤雅
 そりゃど 〜 も 。 


赤雅
 ま 、お粥だから
他人が作っても変わらんけどな








 澄ました顔の彼だったが 、


微かな笑みが浮かんでいる 。




それは 、 学校で見かける外行きの笑顔とは違った


優しい微笑みで、つい凝視してしまう 。








赤雅
 …… あなたの名字 ? 




あなた
 あ …… いえ 、 
なんでもないです 。









 一瞬浮かんだ微笑みは即座に消えてしまったのは


何だか勿体無い 。




私は 、 そう思ったが口にはせず


誤魔化すようにお粥をちびちびと口に運ぶ 。








  私が 、 おかゆを食べ終わった後


少ししてから 、 彼は帰る準備をした 。








赤雅
 とにかく今日は安静にしろ 。 


赤雅
 水分補給とかも忘れんなよ 









 彼が指を指した先には 、 


未開封のスポーツドリンクや汗を拭くためのタオル 、


予備の冷感シートがサイドテーブルに置かれてあった 。




彼はそのまま帰宅しようとドアノブを握ると 、


私は何故か昨日の事が脳裏を過ぎってしまい


少し居た堪れなくなってしまった 。








あなた
 あ 、 あの …… 


あなた
 昨日もしかして 、
彼女に振られたんですか …… ?




赤雅
 …… は ? 








 私が 、 雨の中公園にいた理由 、 と付け加えると


彼は唖然としたように目を見開く 。






赤雅
 んな訳ねぇだろ 。
彼女なんて出来たことねぇよ




あなた
 え …… なんで 、 









 あんなにモテるのに勿体無い …… と 、 私が思うと


彼が少し疲れたような表情を浮かべる 。








赤雅
 だって 、 告ってくる奴とか
大体めんどくせぇ女ばっかだし 。


赤雅
 なんかべっとり付いてくる感じ 、
俺嫌いだから 。




あなた
 …… 何だか安心しました 。 


あなた
 王子でもそんな感情
抱くんだなと思うと 、




赤雅
 …… やめろ 、 その呼び方 。 




あなた
 まぁ 、 いいじゃないですか 。 








 私は不服そうな彼を見て 、 くすっと笑いながら


彼が部屋を出るのを見届けた 。




ただ 、 やはり風邪は風邪なようで


治ってきたと思っても 、 激しい睡魔に襲われ




彼がいなくなってから 、


すぐにベッドへ横たわった 。




『 翌日からはまた 、 顔見知りの他人 』


なんて彼を思いながら 、 私は眠りについた 。








N E X T .
















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