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第1話

亡くなった彼女へ追悼の意を
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2023/12/23 05:54 更新
担任
30秒間、亡くなった田嶋さんに黙祷
しんと静まり返った教室にぽつんと開いた一つの座席。その机の上の花瓶にキクの花が一本だけ活けられている。
いつもは騒がしいほどのホームルームだというのにみんな揃って音を押し殺してここに存在する。耳をすませばかすかに誰かが啜り泣く声が辛うじて聞き取れた。
少し空いた席に目をやった後、声に従って私は静かに目を閉じた。

クラスメイトの田嶋さんが今朝、屍体したいとなって発見された。

死因は郊外にある廃墟ビルの屋上からの飛び降りとみられる落下死。
つまるところは自殺。
現場にいた警察官も先生もクラスメイトも彼女の親でさえそう思っているはずだ。
というか普通に考えればそうなるのが自然だ。
でも、私は知っている。
放課後に電話で誰かとあの廃墟ビルの屋上での待ち合わせを約束する彼女の姿を。
確かにこの目で見てしまった。
電話口の少年の声を確かに聞いてしまった。



私は彼女が殺されたであろうことを知っている。




誰もが信じて疑わない自殺に対し私は限りなく確信に近い疑いを持っている。
 

担任
目を開けてください
再び聞こえた声に従って私は目を開いた。
30秒間もつむっていた目はしょぼついてぼんやりする。
目を少し擦った。
クリアな視界が戻ってくる。
周辺を少し見まわした。
多くの人が本心かどうかはさておき泣きそうな苦しそうな顔をしている。
ぼんやりと彼女の席を眺める人も一定数いる。
呼吸をしづらくさせるガスが彼らから発せられているかのような重さが教室という空間を支配する。
これがたった一人、されど一人の死がもたらした空気。
たった一人分の鼓動が重くクラスメイトの心を揺さぶっているのだ。
彼女と私はさほど仲の良い間柄ではなかった。
というかそもそもクラスに仲の良い人など私にはいない。
私が勝手に彼女の事をひっそりと慕っていただけだ。
会話したことすら他のクラスメイトに比べて非常に少ない。

彼女は親友と呼べそうなほど仲の良い友人こそいなかったものの、クラスの皆に慕われる孤高の人だった。

これほどの人が涙を流すのもその人望の厚さからだ。
この教室では泣いていない方が浮いてしまう。
それでも私は泣かなかった。
きっと悲しい顔すらしていなかったことだろう。

だって私にはその権利がないのだから。
泣くことも悲しむことも私には許されていないのだから。
誰が彼女を殺めたのか。
それを探る術をただ考えた。
これが悲しむことも許されない私なりの贖罪しょくざいだ。
※贖罪・・・罪をつぐなうこと

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