教室の鍵が開けられ、先輩 に抱きしめられたあと ……
しばらくの沈黙のなかで、俺の震えは少しずつ収まり、
やがて静かな呼吸を取り戻した
先輩 は俺の濡れた制服に気づき、
自分の持っていた体操服を取り出した
誰もいない教室
先輩 は目を逸らして背を向けたまま、
俺が着替え終わるのを待っていた
数分後、制服を脱ぎ体操服に袖を通した
そう声をかけると、先輩 はそっと振り返った
会話はそこからぽつりぽつりと始まった
放課後に呼び出されたこと、呼び出された理由、
あの女子の言葉、暴力、水 ……
さっきの出来事のすべてを、ゆっくり話した
先輩 は隣に座り、ずっと俺の背をさすってくれた
時に拳を握りしめ、
時に悲しげに眉を下げながら、ただ静かに聞いていた
言葉の最後は震えていた
聞きたくて、でも聞きたくなかったこと
でも、今しか聞けない気がした
俺は躊躇いつつも、先輩 を見つめた
その瞬間、先輩 はそっと目を伏せて言った
先輩 はそう言って軽く頭を下げた
── じゃぱぱ side
ある日の放課後
後輩に呼び出されたんだ
その子はなかなか喋らなくて
どことなく緊張してる様子だった
俺はその子が話し出しやすいように、
なるべく柔らかい雰囲気をつくった
その子は決心がついたようで、
俺のことを真っ直ぐ見つめてきた
俺はどうしたらいいか分からず、混乱状態
まさか告白だとは思わなかった
その子は話し出したら止まらない、そんな子だった
小さい頃から俺はモテるほうだった
女の子から告白されるのもしょっちゅうで、
その度に断り続けた
その子のことを、
心の底から大事にしてあげれる自信がなかったからだ
この日もいつものように、断ろうとした
でも、頭に浮かんできたのは ゆあんくん で ……
好きと自覚してから、ことある事に浮かんでくる
それほど、俺は ゆあんくん の虜になっていた
さっきまでの性格がなかったかのように、
その子は暴れだした
しかも相手を聞かれ、言うべきか悩んだ
でも、ごまかしたくなかった
言った瞬間、女子の顔色が変わった
その一言だけを残し、その子は去っていった
俺がそうした結果が、これだった
悔しさと後悔で喉が詰まる
ゆあんくん が、そっと俺の手に自分の手を重ねた
その声は、震えていたけど確かな強さがあった
俺は思わず息を飲み、顔を逸らしたまま
ぽつりと呟いた
途端に沈黙
けれどその沈黙の中で、
ゆあんくん の瞳からぽろぽろと涙が落ちた
俺はなるべく優しく尋ねる
ゆあんくん は首を横にぶんぶんと振った
否定の仕草が、まっすぐで真剣だった
俺は、ふっと笑った
その目をまっすぐ見つめて、俺は真剣な声で言った
その言葉を聞いた瞬間、ゆあんくん は泣き笑いのまま
勢いよく俺に抱きついてきた
ドサッと後ろに倒れた俺の上で、
ゆあんくん は抱きついたまま、顔を俺の胸に埋める
小さな声で、けれどしっかりとその言葉は届いた
俺は倒れたままの体を起こし、
ゆあんくん と正面から向き合った
そして、そっとその額にキスを落とした
その声は、自分でも思うほど優しくて、
強くて、真っ直ぐで ……
ずっと俺が、…
ゆあんくん が欲しかった本物の愛情だった
やっと、ここまで来た
やっと、お互いが想いを重ねられた
この瞬間を、永遠に閉じ込めたいと思った












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!