その日
空はどこまでも青く高くて
まるで新しい恋のはじまりを
祝福してくれているようだった
昨日、ふたりは恋人になった
でも、変わったようで変わらないふたりの関係に、
少しだけくすぐったさが混じる
下校の時間
俺は ゆあんくん と並んで歩いていた
でも、ゆあんくん はどこかぎこちない
いつもと同じ帰り道なのに、足取りも視線も
落ち着かなくて、俺の隣でどことなくそわそわしていた
それに気づいた俺は、そっと ゆあんくん の手を取った
突然の温もりに、
ゆあんくん の目がぱちっと大きく開く
けれど、逃げることはなく繋がれた手を見つめながら、
少し赤くなって笑った
笑い合いながら 、繋いだ手の温度が
ゆっくりふたりの心をあたためていく
そんな帰り道の途中、俺は思い出したかのように
ふと立ち止まった
俺が向かったのは、大きなショッピングモールだった
人通りの多い中を抜け、
案内したのはジュエリーショップ
俺はウィンドウの中を指差した
ゆあんくん の顔がぱっと赤くなった
ぼそりと呟いたその声が愛しすぎて、
俺は耐えきれず笑いながら頭をわしゃっと撫でた
そして俺は一人でお店の中へ
俺が選んだのは、緑と赤のラインがそれぞれ入った
細身のペアリング
緑は俺のいろ
赤は ゆあんくん のいろ
それぞれの色が、ふたりを象徴するような ……
迷わずこれに決めた
会計を終え、店の外で待っていた
ゆあんくん のもとへ戻る
そう言い、俺らはショッピングモールを出て、
近くの公園へ向かった
ベンチに腰掛け、蝉の声が遠くで鳴く中、
俺はさっきの小さな箱を取り出した
おそるおそる目を閉じる ゆあんくん の薬指に、
緑のラインが入ったリングをはめた
目を開けた瞬間、
ゆあんくん は驚いたようにリングを見つめた
俺も自分の指にリングをはめて見せる
俺は、真っ直ぐ ゆあんくん の瞳を見つめた
ゆあんくん はリングを見つめながら、
ゆっくりとそれを自分の胸元に当てた
俺は ゆあんくん のその言葉に「 知ってる 」と答えた
そのあとも他愛ない話をして、また手を繋いで ……
俺はいつものように ゆあんくん を家まで送った
玄関前、ゆあんくん が振り返って言った
ゆあんくん は嬉しそうに微笑み、
と、小指を差し出した
俺も ゆあんくん の小指に絡め、誓う
ゆあんくん が家に入り、ドアが閉まったあと
俺は少しだけ玄関前に立ち尽くして、空を見上げた
ゆあんくん とは、入学式の日に初めて出会った
クラス分けが掲示された廊下で、ぶつかりそうに
なりながら歩いていた小さくて、少し不安げな背中
この独り言は、誰にも届かない
けれど、その胸に広がるのは確かな想いだった
たったひとりの男の子に、恋をして
今、その人の隣にいる
リングが指にやさしく光った
心の中でそうつぶやいたその瞬間 ……
彼の世界は、 確かに変わっていた












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!