あれからどれくらい経っただろうか。
それでも結局頭の中を巡るのは解になりえないもやだけ。
葉が揺れる音
足音とともに、不機嫌そうな猫がやってくる
苛つく
こんなに悩んでいるのに、この感情が健在だとは
その嘲るような声に、堪忍袋の緒が切れる
というか、それに気づく暇もなく、胸ぐらを掴みかかっていた
言葉が出ない、こんなになったのは初めてだ
今まで、少なくとも俺には味方がいた。
でも今は、父様も母様も、ハイクリフも、杏里も...
片手で首を絞め、軽く持ち上げる
宙に上げ首を掴んでいたユハンから力を抜き、
へたりと地面に下ろす
違う、こんなこと言いたいわけじゃないのに
ユハンは俺を罵り、
小声で何かを呟きいた後、元の方角にかけ出す
そうして、1人になって冷静になり。
自分がありえない事をしてしまったと気づく
そして、己がこんなに切羽詰まっていたということにも、今初めて気づいてしまった。
...また葉音が鳴る
まさか戻ってきて!
と振り返るも、そこにユハンは見当たらない。
代わりにそこに佇むのは、
絶妙な笑顔で迎える1人の男だった
耳が痛い
あんまりにもその通りなもんだから、何にも言い返せなくなる
うっ、と唸ったような声が聞こえ、
ハイヴが「それ」をあげてみせる。
すると、ハイヴがユハンを担ぎあげているのが見えた
混乱する
何でこいつがこんなことをするのか、わからない
無言でいると、ハイヴがぼそりと嘆く
猫が何かを思い出したように、萎んでゆく
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!