第59話

ふたり。
2
2024/06/05 13:20
優劇荘の風呂は、
隣の旅館との共有スポットとなっていた。

そのおかげで広くて深く、
効能まで着いた露天温泉に毎日入れるのだが...
夜蘭
夜蘭
・・・・はぁ
この疲労感には効能の効き目より、
なによりこの湯の暖かさが1番効くな。

と夜蘭がお湯に顔をつける


とろついたお湯を顔にぴしゃりとかけ、
星空に目をやる
夜蘭
夜蘭
大事になったな。杏里。
夜蘭
夜蘭
お前は今、なにしてるんだ?

こっちはもうよくわかんねえ。
ケフェウスに手をかざす。

暗くて、マイナーな星。
夜蘭はその星を北極星を頼りにしないと
みつけることすらできない。

だが、秋の夜。
ケフェウスは必ずそこにあって。



・・・ケフェウスって、どんな星だっかな
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
最初の星。ですか
湯気に隠れ、気づかなかった。
リスタの声が後方から投げられ、その意味を噛み締めながらのろりと振り向く
夜蘭
夜蘭
・・・最初の星ねえ
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
お隣、いいですか
夜蘭
夜蘭
だめって言っても来るんだろ
勝手にしろよ
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
、そうですね
ちゃぽん、と波紋が経つ


なんだかこの雰囲気を久しぶりに感じる

最近絶え間なく過去が苛烈に動き出していて、
なんだか流れについて行けなないような、安心できないような気概があった。

昔馴染みだからか、
隣にいるだけで安心がやってくる。

ここで再開するまであんなにいがみ合ってたのに...
夜蘭
夜蘭
・・・・置いてって悪かった
なんだか、いつもより素直になってしまう。


リスタの目に涙が溜まる
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
あなたを...、留められなかったのは僕や
ただ声をかけただけなのに、ここまで?
夜蘭
夜蘭
...あいかわらず、自責的で頑固だな
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
あなたこそ
夜蘭
夜蘭
..俺が変わらない?
邪険なような俺の声を聞いて、
リスタが少し尻込むのがわかる


だって、俺はひたすら前に進んできた


進まなきゃ行けなかった、
止まる訳にはいかなかった。

常に自分がすり減るような感覚が纏付まといつきそれとは共に成長してきた。


成長しなきゃと歩んできたつもりだった
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
・・・ふ
何がおかしいのか?

数秒後、自分の顔がくしゃりと安堵にしぼんでいた事にきずく
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
 わざわざ王宮でぬくぬくやってると思って迎えに来たら、まさかの役者ですよ?僕は本当に思いもよらなかった
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
あなたは、わがままですし、周りの人を振り回すし、身内の前ではとことん子供になるし...俺らを置いて先に進もうとする。そんなとこ、変わりません
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
... でも、だからこそ。留まることをしらないあなたはずっと、俺にとっての一等星でした。今も、昔も。
黙っていると、何かを感じとったリストがまた笑う
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
...ええ、変わってませんよ。
まぁ殿下はご存知無さそうですけど
1番恐れてきたはずの言葉。


なのに
夜蘭
夜蘭
.....っ、
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
ほら、溜め込むとこも変わってない
夜蘭
夜蘭
なわけ、......ねえだろ、、!
そんな裏腹な裏腹な言葉を吐きつつも、
俺は今内心酷く安心してしまっていた。

切り捨てるにつれ、自分が自分じゃなくなるような感覚が怖くて仕方なかった。
どこへ向かっていくのかわからなくて、怯えてた

なのに...

変わらない、だなんてな
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
...ふ、やっと貴方と会話出来た気分や
夜蘭
夜蘭
はぁ。こっちこそ、その通りだ。
・・・・お前のそのエセ関西弁も健在なようだしな
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
そうですよ。
もうコレも、僕の1部になってはるんです。やから僕はずっと僕なわけじゃないし...俺な時だってある
笹に揺れる空が、漆黒が、記憶を辿ることの背中を押す
夜蘭
夜蘭
・・・2年か
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
えぇ。
夜蘭
夜蘭
なぁ、明後日来てくれるか。
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
はぁ。
行くに決まっとりまっしゃろ、ばか。
(お望みの通りに)

決まりきったポジションに、
性格も関係も奪われてたあの時とは、全く違う
夜蘭
夜蘭
はぁ。ほんなら、、よかったわ
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
....あんたに移ってどうするんです
そしてそのまま、
夜蘭は湯煙と共にぶくぶくとお湯に沈む

安堵と決意


まるで、何かの覚悟が決まったように晴れやかな顔で

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