霧の裂け目を抜けたあなたの下の名前たちがたどり着いたのは、深い山の中だった。
木々の間に漂うのは、鋭く鉄臭い「血」の匂い。
不破が警戒を強めた直後、地面をえぐるような音とともに、鬼が飛び出す。
間一髪で剣持が反応し刀を抜いたが、鬼は尋常ではない速さだ。
だが次の瞬間ー
夜を切り裂くような叫び声とともに、鋭い斬撃が鬼の胴を一閃する。
その刃を持つものこそが、甲斐田晴。
隊服に身を包み、額には血が滲んでいる。
鬼は断末魔のような悲鳴を上げ、血をまき散らしながら崩れ落ちた。
それを無言で見下ろした彼は、血に染まった日輪刀を軽く振り、血を振り払う。
相変わらずの、落ち着いた声。
その眼差しは鋭く、迷いのない"剣士"のそれだったが、言葉には優しさが滲んでいた。
剣持も駆け寄ろうとするが、甲斐田は首を傾げた。
その場にいる全員が、固まった。
その言葉に、甲斐田の眉がかすかに動いた。
あなたの下の名前はゆっくりと歩み寄ると、血に染まった隊服の甲斐田の前で足を止めた。
甲斐田の瞳が一瞬、揺れる。
その時。
「ギィィィイイアアア!!!」
森の奥から、また新たな鬼が飛び出してきた。
鋭い爪があなたの下の名前を狙って振り下ろされる。
だが、その刹那。
甲斐田の体が、風のように動いた。
まるで"反射"のように、彼はあなたの下の名前の前に立ち、鬼の爪を受け止め、瞬時に首を狙って斬り下ろす。
ズン、と重い音とともに、鬼の首が転がった。
その声を聞いた瞬間。
甲斐田の頭の中で、"何か"が弾けた。
ーありがとう、甲斐田さん!
ーやっぱり甲斐田さんがいないと落ち着かないね〜!
まるで頭を強く打ったように、膝をつく。
甲斐田は息を荒げながら、震える手で額を押さえた。
甲斐田の目に、光が戻っていく。
忘れていた感覚、失われた記憶、仲間たちの声、そのすべてが、胸を貫くように流れ込んでくる。
静かなその言葉に、不破と剣持がふっと笑う。
あなたの下の名前は、頷いた。
そして、またもや霧の中に光る"転移の裂け目"を見つめた。
笑いながら、4人は光の中へと歩みだす。次の世界が、開かれる。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。