役職を取られたあの日から少し経った
ある日の夜の事…
夜の23:25。風邪でも引いたのか頭が重く、視界がぼやけてくる。少しばかり体が火照っているような気もする…
あと5分でAmong Usの収録が始まるというのにボイスチャットはおろか、ゲームの起動すらもできていない。
そう思い、パソコンの前に座る。
ディスコードは開けたが視界がぼやけて文字がよく読めない。メンバーに今日は参加出来ないことを伝えたいが上手く文字を打てているのかも分からない…
椅子に座っているはずなのに体の軸がなかなか安定しない、今すぐにでも倒れてしまいそうで意識を保つのが精一杯だ。
ぼやける視界に震える指先、間違いなく誤字はしているだろうがそんな事は関係ない。
皆に伝える、それで頭がいっぱいだった。
送信したパソコンのモニターを視界に入れたのを最後に、私の意識はそこで途切れた。
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次に目が覚めたところは暖かいベットの上だった。
確か、倒れて床で寝てたはずなんですが…
なぜベットの上にいるんでしょうか…
その時、ドアの隙間から微かに光が漏れていることに気がついた。ほんのりいい香りがする気もする。
本来、家に自分以外の誰かが居ることは大問題なのだが今は体調が悪すぎてそれどころじゃない。
その瞬間、ドアが開き目に光が飛び込んできた。
突然明るくなったため反射で目を閉じる。
聞きなれた声がする。
間違いない、ウパさんだ。
どうですか!偉いでしょ!と言わんばかりのドヤ顔で話してくる。認めたくはないが正直、すごく助かったしものすごく安心している。
せっかく人が褒めたのにこの態度。
やはりウパさんはウパさんでした。
失礼だなこの両生類。
せっかく恥を捨てて素直にお礼を言ったのに…
お粥…さっきのいい香りの正体はこれでしたか。
正直お腹も少し空いていましたし、ありがたく頂くとしますかね。
突然何を言い出すかと思えば…!?
なんかウパさんニヤついてるし…!
絶対面白がってますよね…
…少し恥ずかしいですが、折角作って貰いましたし…
ぐ…やっぱりものすごく恥ずかしい…
なんであーんってこんなに恥ずかしいんでしょうか…
そしてなんでこの両生類は楽しそうにしてるんだ…
そんなことを考えながらお粥を口に運ぶ。
随分と食い気味ですね…
なんでそんなに焦ってるんでしょうか…
まぁ、今はそんなこといいか。
それよりも早くご飯を食べて早く寝てしまおう。
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何を寂しがってるんだ私は。
もう沢山看病してもらいましたし…
流石にこれ以上はわがまま…ですよね。
でも…何か寂しいですね…
嬉しい。不本意だけどものすごく嬉しい。
眠気が限界で何も考えられない…
おやすみなさい、と一言呟き、
私はそのまま瞳を閉じた。
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ウパパロン視点↓
夜の23:30分。Among Usの収録が始まる時間。
普段ならもう全員集まっているのだが、
Latteさんだけがまだチャットに参加していない。
Latteさんが遅刻するなんてことは今までに無かったし、心配ですね…何も無いといいんですが…
その時、チャットの画面にLatteさんからのメッセージが映る。
熱が出たってだけで心配なのに、ここまで酷い誤字をするくらいに重たい熱なら尚更心配だ。
急いでLatteさんに電話をかける。
…が、何度かけても電話に出ない。
これはマズイんじゃないですか…!?
Latteさんの家はメンバーの中なら私が1番近い。
めめさんから返事を貰ったのを見届けた後、直ぐに電源を落として合鍵を握り家を出た。
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コンコン、とドアをノックする。
返事は…無い。
急いで合鍵を取りだしドアを開けようとする…
が、鍵がかかっていない。
防犯意識が低すぎて不安になる…
そんなことを考えながら家の中に入る。
返事はなし…電気もつけっぱなし…
これ、どこかで倒れてそうですね…
それなら急いで探さなきゃ…!
そう思った矢先、リビングで倒れているLatteさんを見つけた。
ダメだ、完全に熱で飛んでる…。
とりあえず部屋に運んで寝かせよう。
そう思いLatteさんの体を抱えた。
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あまりの軽さに驚きながらも部屋まで運び、
ベッドに寝かせる。これで一旦安心出来る…
小さく寝息を立てて眠る彼女を見ながら、
自分の恋心をまた自覚した。
彼女とはいつも喧嘩や煽りあいをしてしまって、なかなか素直になることが出来ない。
きっと、Latteさんは自分の事が好きでは無いんだろうな…
さっきのしんみりした気持ちとは一変、張り切って作るぞ!と言う明るい気持ちでキッチンに向かった。
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あらかじめ持参しておいた食材を使って
暖かいお粥を作った。
さすが私、優秀すぎますね…
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Latteさんの部屋のドアを開けて中に入る。
Latteさんが起きた…!
良かった、一気に安心した…。
Latteさんが起き上がり、ベッドから出ようとする。今起き上がったらLatteさんの体調が悪化しちゃうかもしれませんよね…
少し困惑したような表情でこちらを見てくる。
そりゃそうだ、誰だっていきなり家に居られたら
驚きますよね…
電話に出なかった時は本当に心臓が止まるかと思いましたよ…。そう考えると私偉いですね…!
あのツンツンなLatteさんが素直になるなんて!?
きっと熱のおかげもあるんでしょうね…
顔を赤くしてそう言うLatteさんに少しドキッとする。可愛い…ダメだ、今なにか言おうとすると可愛いって言ってしまいそうになる…
煽り言葉でなんとか誤魔化せた。
こんな煽りみたいな言葉で誤魔化しちゃいけないってのは分かってるんですが、こうでもしないと本音が出てしまう…
Latteさんがいかにも失礼だなと言いたそうな顔をしている。流石に少し反省…
やっぱりからかうのは面白いなと思った時、さっき作ったお粥の存在を思い出した。
お粥をLatteさんに渡そうとした時、いい考えが浮かんだ。そうだ…ちょっとからかってやりますか!
ぽかんとした顔でこちらを見つめてくる。
どうやら状況が飲めていないようだ。
やっぱりLatteさんをからかうのは楽しい…w
もう少しからかっちゃいますか!
すごく嫌そうな顔をしながらも素直に口を開けてくれた。スプーン越しとはいえ指と口の距離近すぎる…!やってる側もドキドキしますねこれ…
少し恥ずかしそうにしながらも美味しいと言って貰えた事に、胸が高鳴った。
そんな事を考えながら、スプーンを目の前の彼女の口に運ぶ。
Latteさんが痛がってる…いつもは見せない表情だ。
なんか…なんというか…
すごく可愛い…。
……ばかばかばか!こんなこと考えちゃ…
でもやっぱり…ぐ、可愛い…
まずい!声に出てた…!?
やばいやばい!何とかして誤魔化さないと…
少し困惑した様子のLatteさん。
まぁでも…バレてないならヨシ!
誤魔化しきれたことに安心しながら
また次の1口を彼女の口に運んだ。
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荷物を持って、部屋から出ようとしたその時。
本当はまだ居たいですけどね…
いつまでも隣に居られたら良いのに…
小さな声で、呟くようにそう返事をした彼女。
まるで迷子の子犬のように寂しげな表情をしている。
Latteさん、寂しいのかな…。
……
勇気を出せウパパロン、落ち着くんだ…
Latteさんの表情が一気に明るくなる。
嬉しいのを本人は隠しているようだが、バレバレだ。
こういう所が可愛いんですよね…
なんて、さりげなく一緒に居たいアピールしてみたり。
きっと「何言ってるんですか」って言われちゃうんでしょうけどね…
ほら、やっぱり………
…え?……えっ!?!?!?
あまりの速さに少し驚く。
まぁ、Latteさんいつも忙しそうですもん。
よっぽど疲れが溜まってたんでしょうね。
小さく寝息をたてながら眠る彼女の手をそっと握り、自分も眠ろうとしたその時。
突然腕を引っ張られて布団の中に引きずり込まれる。
なになに、展開が全く読めないんですが!?
いきなり布団の中に引きずり込まれたと思ったら、その引きずり込んだ人は寝ちゃうしなんか抱きつかれてるし……
なんなんですかこれ…頭が追いつかない…
よし、一旦状況を整理しましょう。
まず私は好きな人に抱きつかれて一緒に寝てると…
いや訳分かりませんね。どういうこと
これでも私は男なんですよ…?
何されるか分からないのに無防備過ぎますって…
いや、そういう気は一切ありませんが!!
なんか警戒心が無さすぎて心配になる…
そんな思いに溢れた独り言を呟いて、ゆっくりと瞳を閉じた。
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(Latteさん視点に戻ります)
暖かい日が差し込んできた翌日の朝にて
そうか、昨日体調を悪くして…
そしたらウパさんがお見舞いに来てくれたんでしたっけ。
そういえばウパさんはどこに…
…?……???
なんでウパさんは私のベッドに居るんだ…?
そしてなんで私はウパさんに抱きついているんだ…?
寝起きの頭で昨日の事を思い出す。
昨日…昨日といえば…
……あっ
この両生類…!
というか昨日のは別に本心じゃないですし!
無意識にやっただけですし…!!
朝から元気に言い争う2人。
はたして、2人が自分の気持ちに素直になる日は来るのだろうか…
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!