航海の日が、少しずつ近づいていた。
龍水を中心に、船の修理や物資の積み込みが着々と進められていく中、
あなたも少しずつ回復し、村の中を歩けるようになっていた。
「無理はすんな。まだ完治ってワケじゃねぇんだ。」
背後から聞こえた千空の声に、あなたは軽く会釈で答える。
そう言って歩いていく彼女の背中を、ゲンがふっと笑って見送った。
羽京は荷物の仕分けをしていた。
彼女がそっと近づくと、すぐに気づいて顔を上げる。
その一言に、羽京の表情が少し緩む。
いつもと変わらない穏やかな笑顔。けれど、それがどこか愛しく感じられた。
あなたは、そっと彼の腕に寄り添った。
羽京は一瞬驚いたように目を見開き、そしてゆっくりと笑った。
その言葉に、胸がいっぱいになる。
石になった日、何も言えなかったあの日。
今こうして、未来の話ができることが、ただただ嬉しかった。
そう言って、羽京は彼女の額に、そっと唇を重ねた。
その優しさが、心の奥まで染み込んでいく。
照れたら話を逸らしたがる。あなたの癖だ。
それを見て羽京は静かに微笑む。
…ずっとこの幸せな時間が、続きますようにと
あなたは心から願っていた。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!