少しだけ顔色の良くなったあなたを見て
安心しながら、
ルームサービスに軽食のサンドイッチと
牛乳、オレンジジュースを頼んだ
でもあなた、痩せたな‥
かといって
無理矢理食べさせるのは良くないよな
小動物みたいに少しずつサンドイッチを
口に入れるあなた
俺もサンドイッチを口に頬張る
全然お腹もすいてないし
全然美味しいとも感じない
何なら味がしない
でもあなたに食べさせたい一心で
口の中にただ入れていく
こんなにギクシャクした空気なのに‥
相手があなた‥だからなんだよな
会えないよりは
こうやってギクシャクしてでも
同じ空間にいるだけで
それだけでもいい
せめて自分の気持ちをあなたに
ちゃんと伝えたい
目を見て
あなたの心に入るように
偽りのない言葉で
言葉が喉に詰まる
席を立って
あなたを引き寄せて
抱き締めた
こんな話の途中でだめだとは分かってるけど
抱きしめたい気持ちが止められなかった
ずっと心に引っかかってたもや
俺が一般人だったら
あなたと手を繋いで
ご飯だって
遊園地だって
旅行だって行けるのに
色んな人に俺の恋人って紹介できるのに
いつも日陰にあなたを隠して
周りにさとられないように
そんな気を遣わせなくてもいいのに
あなたの友達にも会えないなんて
恋人として失格じゃないか
そんなことをずっと考えてた
やっぱり俺はあなたじゃないとだめだ
あなたがいい
強い口調で声を震わせながら
はっきりと物言いするあなた
なんであなたがそれを知ってる?
待って、
まだ言わないで
お願いだから‥
なんでなんだよ‥
これじゃ何も変わらないじゃん
俺の紛れもない本心なのに
なんでだろう
どうしたってあなたに届いてない気がするのは
ああ、そうか‥
もうあなたは決めてるのか‥
揺るがない想いがもうあるのか
ほら、あなたはこんなに強いじゃん
どこが弱いんだよ‥
一度口にしたことにちゃんと責任を持って
強い瞳で‥
その証拠にほら
涙だって一滴も零れてない
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。