第111話

お部屋披露大会.°
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2020/08/25 11:45
焼き肉を食べ終わって、すぐにまた部屋作りに皆が移動した。


私はもう部屋作りが終わっているから、同じく終了した障子くんと一緒に後片付けをする。




障子「これ、まだ熱いよな?」


あなた「うん、冷めてから洗おうか〜……とりあえずこっちの食器を___」





テキパキと片付けを終わらせて、プレートの処理も終わったところで切島くん達が降りてきた。




切島「あぁ、疲れた〜ようやく終わった!」


緑谷「お疲れ様っ」




皆でソファーに並んで座ってくつろぐ。




上鳴「経緯はあれだが、共同生活ってワクワクすんな!」


緑谷「うん!」


芦戸「男子〜部屋できた〜?」




三奈ちゃんたちが合流して、急遽お部屋披露大会が始まった。




緑谷「うわあああああああああだめだめだめちょちょちょまっまっまっ_____」



ガチャッ



初っ端の被害者は、いずくん。



部屋を開けるとすぐに、オールマイトのフィギアや写真、ポスターが陳列されていた。




麗日「オタク部屋だっ」


緑谷「憧れなんで……恥ずかしい////





オールマイトしか居ない……すごいなこれ。





続いて常闇くん、青山くん、峰田くんを飛ばして尾白くん、飯田くん、上鳴くん、口田くん……と、お部屋を見て回る。





上鳴「てゆうかよぉ、釈然としねぇ」


尾白「あぁ奇遇だね。俺もしないんだ。釈然……」


常闇「そうだな……」


青山「僕もっ」


あなた「……え?」




なんか急に空気が……。




峰田「男子だけが言われっぱなしってのは変だよなぁ……。お部屋披露大会っつったよな〜」




峰田くんはビシッと私たちを指差すと、ど迫力で言い放つ。



峰田「なら当然!女子の部屋も見て決めるべきじゃねぇのかぁ!?誰がクラス1のインテリアセンスの持ち主かぁ、全員で決めるべきじゃねぇのかぁ〜?」



あなた「……え、峰田くん部屋公開してなi____」



芦戸「いいじゃん!!」



あなた「え」





第1回、A組ベストセンス選手権……開催。









あなた「えぇ……ほんとにするの?」




早速見に行こう、とエレベーターに向かう皆の背中を見ながら、抗えないと悟った。




轟「……行かねぇのか」


あなた「や、行くけどさ……」


轟「さっさと終わらせよう。眠ぃ」




……寝てもいいんだよ……?


爆豪くんとかもう部屋いってるし……。




芦戸「じゃあ切島部屋!」


切島「どうでもいいけど、多分女子には分かんねぇぞ」



ガチャッ




……大漁?



切島くんの部屋は、もうなんか、筋肉。



ただ_____。




葉隠「彼氏にやって欲しくない部屋ランキング2位くらいにありそう……」


あなた「おぉ……、サンドバッグだ!切島くん!サンドバッグだ!!」


切島「お、おう……?」


あなた「やってみたい!今度部屋来てもいい!?」


芦戸「あなた!?」


切島「おぉ!やっぱあなたには分かるかこの部屋の良さが!来い来い!」


あなた「うん!大漁とか筋肉時計は意味分かんないけど!」


切島「……」


芦戸「(あなた……サラッと部屋行く約束したけど、)」


麗日「(心なしか轟くんの機嫌が……)」




??



皆、気まずそうにどうしたんだろう……?




続いて、障子くん。




畳布団と勉強机だけが置いてあって、スカーンとしている。





轟「ミニマリストだったのか」


障子「まぁ幼い頃からあまり物欲が無かったからな……」


あなた「障子くん、すごく親近感を覚えるよ……!」


障子「……??」




物はあまり置いてないけど、私の部屋よりは生活感あるし……ね。



八百万「次は轟さんですわね」



轟くんの部屋かぁ……どんなだろ。



八百万「(クラス屈指の実力者……)」


芦戸「(クラス屈指のイケメンボーイ!)」


葉隠「(クールな轟くんの部屋……ちょっとドキドキ!)」



エンデヴァーの藁人形とかあったらどうしよう、絶対無いけど。



ガチャッ



……。



芦戸「和室だぁぁぁ!!?」


轟「実家が日本家屋だからよ……フローリングは落ち着かねぇ」




流石です、轟くん……。






続いて、佐藤くん。




佐藤「つまんねぇ部屋だよ……」


切島「轟の後は誰でも同じだぜ……」


尾白「というかいい香りするんだけど、これ何?」




佐藤くんの部屋は当然ながらフローリングで、入ってすぐに確かに甘いいい匂いが漂ってきた。




佐藤「ああぁっいっけね!大分早く片付いたんでよ、シフォンケーキ焼いてたんだ。皆食うかと思ってよ……食う?」



「「「「食う〜っ!!!」」」」




切り分けてくれて、皆に配ってくれた。




佐藤「ほい」


芦戸「ありがとー!」


佐藤「ほい」


八百万「頂きますわ!」


佐藤「ほ……あ、百々」


あなた「んぇ?」




何故か、私の番でピタッと切り分けるのを止めた佐藤くんは気まずそうに目を逸らした。



……?




切島「……佐藤」




ポンっと切島くんに肩に手を置かれた佐藤くんは、コクリと頷いてあろうことか私に頭を下げる。




あなた「え、え??」


佐藤「百々……すまん」


あなた「……佐藤、くん?」




なんで謝られているのか、なんで皆の空気が重いのか……。


続く言葉で、ようやく分かった。




佐藤「俺……お前の事、疑って、たんだ……」


あなた「……」




佐藤くんは深々と下げた頭をガバッと上げる。




佐藤「勿論今まだ疑ってる訳じゃねぇ!でも……やっぱそれを隠したまま飄々とお前と生活なんてできねぇから……許されないのは分かってるけど、どうしても、言いたかったんだ……」



あなた「佐藤くん……」





必死に謝るその姿に、なんと声をかけるべきか悩んだ私に、続くように飯田くんも頭を下げた。






飯田「俺も同じだ……百々くんに命を救ってもらった身ながら、君のことを疑ってしまった……。申し訳ない」



峰田「お、オイラも……」




轟𝓈𝒾𝒹𝑒.°



続々と百々に頭を下げるのを見て、俺の中で沸々と怒りが込み上げてきた。



なんでってそんなの、決まってる。




あなた「え、と……顔、上げてよ……」




こいつが、絶対に許すと分かっているから。


もし傷付いても、怒っても、こいつは絶対……。





あなた「ほらっ、あの状況で疑うの当然だしさ!逆に信じてくれた人がいたって事が驚きで、だから…………あぁ、もう!」





百々はヘラヘラ笑いながらそう言うと、佐藤が切り分けたシフォンケーキを奪い取ってパクりと頬張った。





あなた「うっっっっっま!!!信じられんくらい美味しいねこれ!!よく作るの!?」



頬を覆って表情を緩めた百々。



佐藤「あ、ああ……個性の訓練がてら、」


あなた「へぇぇ、じゃあ今度また作って欲しいなぁ!チョコ系のやつがいい!!いい?」



ズイッと近寄った百々に、佐藤は「お、おう……」と言葉を濁した。



あなた「飯田くんっ、私さっき話した通り一般常識弱くてさぁ……お部屋の本、良かったらかしてくれないかな!?」


飯田「そ、それは構わないが……」


あなた「ほんとっ!?良かった〜助かる!……はい!これでチャラ!」



パンっと手を叩くと、これでもかというくらいの笑顔を作った。


やっぱりこいつは……誰よりもお人好しだ。




佐藤「で、でもよぉ……俺たち、取り返しのつかない事したんだぜ??」


あなた「いいの!こうしてもっかい迎え入れてくれた事が何より嬉しいし、こうして美味しいケーキも食べれる!!勉強もできる!私なにも傷付いてないんだよ??むしろお得!だから_____」




ああ、よく分かった。





なんで俺が、こいつの笑顔に心が動くのか。


なんでこいつが傷付くと、俺の事のように思えるのか。


なんでこいつをこんなにも、信用しているのか。



なんでこいつと、ずっと一緒にいたいと思えるのか______。





百々は扉の方に歩いていって、くるりと振り返るとまた、いつもの陽気な笑顔を俺たちに振り撒いた。






あなた「おしっ!次行こう!!」








全部分かった。









……俺は、きっと。






こいつの事を__________






















1人の女として、心底"大切"だって思っているんだ。

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