帰宅して早々、あにきに回収されたはずの兄に抱きしめられる。靴も脱いでいない弟に抱きついてスーハーと匂いを嗅いでくる兄に苦笑を禁じ得ない。
一言連絡を入れれば良かったとそこは反省した。だが店外から僕らの様子を伺っていた兄も兄である。
言い返すと図星を突かれたのか、余計に強く抱きしめられる。流石に苦しくなり、肩を押すとやっと離れてくれた。だがその眉根は不満そうにぎゅっと寄せられている。
理性を捨てたわけではないのか、葛藤している表情を浮かべていた。長考の末、「これからはしません…」と言質を頂いてほっと胸を撫で下ろす。
手に提げていた紙袋を見せれば、嬉しそうに顔を輝かせる兄。見えない犬のしっぽがぶんぶんと振られているように思える。兄らしくはないが、これでこそ我が兄である。
数日後。あれからりうちゃんとお昼を食べる流れになり、僕の教室でお弁当を食べていると教室のドアからチラチラと兄がこちらを覗いているではないか。
いつの間にか親友が僕らの元に来ていた。そのまま流れるように後ろから僕を抱きしめたため、後輩と兄の視線が鋭くなった。
ねちっこい後輩に辟易してくると、後ろの親友が「はっ」と鼻を鳴らした。
否定しても「照れ屋さんなんやから〜」と頬を頭に擦り付けてくる。こんなところが好きとは絶対に言えないが、愛されていることを実感できて幸せだ。
親友と後輩の口論を眺めながら、幸せを噛み締めるように卵焼きを口に運んだ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!